介護の現場で避けて通れないのが排泄介助です。排泄は人間にとって非常にプライベートな行為であるため、介助する側にもされる側にも大きな心理的負担がかかりやすいケアのひとつです。
しかし、正しい手順とコツを押さえておくことで、利用者の尊厳を守りながらスムーズに介助を行うことができます。この記事では、トイレ介助・ポータブルトイレ介助・おむつ交換それぞれのやり方と、現場で使える実践的なコツを詳しく解説します。

排泄介助で大切にしたい基本の考え方
排泄介助を行ううえで、技術的なコツの前に押さえておきたい基本的な考え方があります。これを理解しているかどうかで、ケアの質が大きく変わります。
自立支援の視点を忘れない
排泄介助の目的は「すべてを代わりにやること」ではありません。利用者ができることは自分でやってもらうという自立支援の視点が重要です。ズボンの上げ下ろしが自分でできるなら、そこは見守りに徹するなど、できる部分を奪わないようにしましょう。
プライバシーへの最大限の配慮
排泄は最もプライベートな行為です。トイレの扉を開けたまま介助する、他の利用者がいる前で排泄の話をするなど、プライバシーを侵害する行為は避ける必要があります。カーテンやパーテーションを活用し、必要最低限の露出で介助を行いましょう。
排泄パターンの把握
利用者ごとの排泄パターン(時間帯、頻度、量など)を把握しておくと、適切なタイミングでトイレ誘導ができます。排泄記録をつけて傾向を分析することで、失禁の予防にもつながります。
排泄介助の基本は「自立支援」「プライバシー配慮」「パターン把握」の3つです。この3つを意識するだけで、利用者にとって安心できるケアが提供できます。
基本の考え方をじっくり学び直したい方は、排泄ケアの専門書を1冊手元に置いておくと、迷ったときに読み返せます。
トイレ介助の手順とコツ
座位が保てる利用者の場合、できるだけトイレでの排泄を支援することが望ましいとされています。以下に、トイレ介助の基本的な手順を紹介します。
トイレ介助の基本手順
- 声かけと確認:「トイレに行きませんか?」と自然な声かけで誘導。体調の確認も忘れずに行います。
- 移動の介助:手すりや歩行器を活用しながら、利用者のペースに合わせてトイレまで移動します。
- 衣類の着脱:自分でできる部分は自分でやってもらい、必要な部分だけ介助します。
- 便座への着座:手すりにつかまってもらい、安全に座れるようサポートします。
- 排泄中の見守り:座位が安定していれば、扉の外で待機して排泄が終わるのを待ちます。
- 排泄後の清拭:必要に応じて陰部の清拭を行います。前から後ろへ拭くのが基本です。
- 衣類の整え:衣類を整え、手洗いを行ってもらいます。
トイレ介助のコツ
- 声かけは自然に:「トイレの時間ですよ」という業務的な声かけではなく、「ちょっとお手洗いに寄りませんか?」と自然な表現を使いましょう。
- 急かさない:排泄は急かされると出にくくなります。ゆったりした雰囲気で待ちましょう。
- 安全対策を徹底:トイレ内の床が濡れていないか、手すりがしっかりしているか確認してから介助を始めます。
- 排泄物の観察:色、量、性状を観察し、異常があれば看護師に報告します。これは健康状態を把握する大切な情報です。

ポータブルトイレ介助の手順とコツ
トイレまでの移動が困難な利用者には、ベッドサイドにポータブルトイレを設置して使用します。
ポータブルトイレ介助の基本手順
- ベッドの高さをポータブルトイレの座面と同じ高さに調整する
- 利用者に端座位(ベッドの端に座った状態)をとってもらう
- ポータブルトイレに移乗する(手すりや介助バーを活用)
- プライバシーに配慮し、カーテンやタオルで覆う
- 排泄後は清拭を行い、衣類を整える
- ベッドに戻る
ポータブルトイレ介助のコツ
- ポータブルトイレの位置は、利用者の健側(麻痺がない側)に設置するのが基本です。
- 滑り止めマットを敷いて安全を確保しましょう。
- 消臭スプレーや蓋つきのバケツを用意して、においへの配慮も忘れずに。
- 使用後は速やかに洗浄し、清潔を保つことが大切です。
おむつ交換の手順とコツ
寝たきりの利用者や、座位を保つことが困難な場合はおむつを使用することになります。おむつ交換は排泄介助の中でも身体的な負担が大きいケアなので、正しい手順を身につけて効率よく行いましょう。
おむつ交換の基本手順
- 準備:新しいおむつ、おしりふき、使い捨て手袋、ビニール袋、陰部洗浄用のお湯などを手元に揃えます。
- 声かけ:「おむつを交換しますね」と声をかけてから始めます。
- 体位変換:仰向けの状態でおむつのテープを外し、側臥位(横向き)にしておむつを抜き取ります。
- 清拭・陰部洗浄:陰部と臀部を丁寧に清拭または洗浄します。感染予防のため、前から後ろへ拭きます。
- 皮膚の観察:発赤やかぶれがないか確認します。
- 新しいおむつの装着:新しいおむつを広げて身体の下に敷き、仰向けに戻してテープを留めます。
- 衣類と寝具の整え:シワがないように整え、快適な状態にします。
準備物のなかでも消耗が早いおしりふきは、介護用の大判タイプをまとめてそろえておくと現場で慌てずに済みます。
おむつ交換のコツ
- 必要な物品をすべて手元に揃えてから始めると、途中で離れる必要がなくスムーズです。
- ボディメカニクスを活用して、腰への負担を減らしましょう。ベッドの高さを自分の腰の位置に調整するだけでも違います。
- 皮膚トラブルを防ぐために、おむつは身体にフィットしつつ、きつすぎない程度に装着します。
- おむつの種類やサイズが利用者に合っているか、定期的に見直すことも大切です。

排泄介助でよくある困りごとと対処法
排泄介助では、手順通りにいかない場面も少なくありません。現場でよくある困りごとと、その対処法を紹介します。
トイレに行きたがらない利用者への対応
トイレに行くことを面倒がったり、拒否したりする利用者もいます。この場合、排泄パターンを把握してタイミングを見計らったうえで、「お散歩がてらトイレに寄りませんか」など、自然な誘い方を工夫しましょう。
失禁時の対応
失禁が起きた場合、利用者の自尊心を傷つけない対応が求められます。「大丈夫ですよ、すぐにきれいにしましょうね」と穏やかに声をかけ、素早く対応します。大騒ぎしたり、「また?」と言ったりするのは避けましょう。
便秘への対応
高齢者は運動量の低下や水分摂取不足から便秘になりやすい傾向にあります。排泄記録で排便の間隔を把握し、3日以上排便がない場合は看護師に報告しましょう。日頃から水分摂取の促しや、腹部マッサージなどの対応も効果的です。
皮膚トラブルへの対応
おむつかぶれやただれが見られた場合は、清潔を保ちつつ、おむつ交換の頻度を増やす、ワセリンなどの保護剤を使用するなどの対応を行います。症状がひどい場合は医師や看護師に報告し、適切な処置を受けるようにします。
排泄介助における感染予防のポイント
排泄介助では感染予防が重要です。特にノロウイルスなどの感染症が流行する時期は、より厳重な対策が必要です。
- 使い捨て手袋は必ず着用し、1回の介助ごとに交換する
- 介助後は流水と石けんで手洗いを行う(アルコール消毒だけでは不十分な感染症もある)
- 汚染した衣類やシーツは他の洗濯物と分けて処理する
- おむつは速やかにビニール袋に密閉して廃棄する
- 排泄物に異常(血液混じり、極端な色の変化など)があれば、すぐに看護師に報告する
感染症が疑われる利用者の排泄介助では、手袋に加えてエプロンやマスクも着用しましょう。使用後の手袋を外す際は、汚染面に触れないよう注意が必要です。
排泄介助の負担を軽減するための工夫
排泄介助は介護職にとって身体的にも精神的にも負担が大きいケアです。以下の工夫で負担を軽減しましょう。
福祉用具の活用
介助バー、移乗ボード、リフトなどの福祉用具を積極的に活用することで、身体的な負担を大幅に軽減できます。施設にある福祉用具の使い方を把握し、適切に活用しましょう。
環境の整備
トイレの手すりの位置、照明の明るさ、ベッドの高さなど、環境を整えるだけでも介助のしやすさが変わります。利用者ごとに最適な環境を整備することが大切です。
チームでの連携
排泄介助は一人で行うよりも、二人で連携して行うほうが安全で効率的な場面も多くあります。特に体格の大きい利用者や、拘縮が強い利用者の場合は、遠慮せずに応援を頼みましょう。
排泄ケアの専門的な知識を深めたい方は、日本コンチネンス協会(公式サイト)が提供する情報や研修が参考になります。また、介護アンテナ(公式サイト)でも排泄介助の手順を動画付きで解説しているので、実技のイメージをつかみたい方はぜひ活用してみてください。

よくある質問(Q&A)
Q. 利用者がおむつを嫌がる場合はどうすればいいですか?
おむつに対する抵抗感は自然なことです。まずはトイレやポータブルトイレでの排泄を最大限支援し、どうしても必要な場合のみおむつを使用するようにしましょう。また、パンツ型のおむつなど、下着に近い形状のものを選ぶことで、抵抗感を軽減できることもあります。
Q. 夜間の排泄介助はどうすればいいですか?
夜間はできるだけ利用者の睡眠を妨げないことが大切です。排泄パターンを把握し、必要な時間帯にのみ介助を行うようにしましょう。夜間用の吸収量が多いおむつを使用することで、交換回数を減らせる場合もあります。
Q. 排泄介助のにおいが気になるときはどうしたらいいですか?
においは介護職にとっても大きなストレスになります。換気を十分に行うことが基本ですが、マスクの着用や消臭スプレーの活用も有効です。また、経験を重ねると慣れてくる部分もあるので、最初のうちは無理をしすぎないことも大切です。
まとめ
排泄介助のコツは、以下のポイントに集約されます。
- 自立支援の視点で、できることは利用者自身にやってもらう
- プライバシーへの配慮を最優先に考える
- 排泄パターンを把握して適切なタイミングで誘導する
- トイレ・ポータブルトイレ・おむつ交換それぞれの正しい手順を身につける
- 感染予防を徹底する
- 福祉用具やチームの力を活用して負担を軽減する
排泄介助は介護の基本でありながら、奥が深いケアです。利用者の尊厳を守りながら、安全で快適な排泄環境を整えることを意識しながら、日々のケアに取り組んでいきましょう。
📦 この記事で紹介した商品


