介護記録は介護職の重要な業務のひとつですが、「何を書けばいいのかわからない」「うまく文章にまとめられない」と悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
介護記録は、利用者の状態変化を把握し、チームで情報を共有し、適切なケアを継続するための重要なツールです。さらに、万が一事故が起きた場合の記録としても、法的に重要な意味を持ちます。
この記事では、介護記録の基本的な書き方から、場面別の例文、効率よく書くためのコツまで、わかりやすく解説します。

介護記録を書く目的を理解しよう
介護記録を書く目的を理解しておくことで、「何を書くべきか」が見えてきます。
情報共有のため
介護はチームで行う仕事です。利用者の状態変化やケアの内容を記録に残すことで、シフトが変わっても途切れのないケアが提供できます。特に夜勤から日勤への申し送りでは、記録が重要な情報源になります。
ケアの質の向上のため
記録を振り返ることで、利用者の状態の変化やケアの効果を客観的に評価できます。「この声かけをしたら食事量が増えた」「この時間帯に不穏になりやすい」といった気づきが、ケアの質の向上につながります。
法的な証拠として
事故やトラブルが発生した場合、介護記録は法的な証拠として扱われます。「いつ」「誰が」「何をしたか」を正確に記録しておくことで、施設と介護職を守ることにもなります。
介護保険上の義務として
介護保険法により、介護サービスの提供に関する記録は一定期間の保管が義務づけられています。記録がなければ、適切なサービスを提供した証拠がないことになり、報酬の返還を求められる可能性もあります。
介護記録は「書かなければならないもの」ではなく「書いておくとチーム全体が助かるもの」です。この意識で書くと、記録の質が変わります。
介護記録の基本ルール
わかりやすい介護記録を書くために、以下の基本ルールを押さえておきましょう。
5W1Hを意識する
介護記録では、「いつ(When)」「どこで(Where)」「誰が(Who)」「何を(What)」「なぜ(Why)」「どのように(How)」を明確にすることが大切です。
例えば、「食事を食べなかった」ではなく、「12時の昼食時、主食を2割、副菜を3割摂取。『お腹がすかない』との訴えあり。体温36.8度、表情は穏やか。」と書くことで、状況が具体的に伝わります。
時刻を正確に書き残すには、介助中でもさっと時間を確認できる胸元用のナースウォッチがあると便利です。
客観的な事実を書く
介護記録は客観的な事実を中心に書きます。主観的な推測や感想と事実を区別することが重要です。
- NG例:「機嫌が悪そうだった」(推測)
- OK例:「声かけに対して返答がなく、眉間にしわを寄せていた」(客観的事実)
推測を書く場合は、「〜と思われる」「〜の可能性がある」と明記し、事実と区別しましょう。
略語や専門用語の使い方
施設内で統一されている略語は使用しても構いませんが、誰が読んでもわかる表現を心がけましょう。施設によってルールが異なるため、入職時に確認しておくことをおすすめします。
禁止事項
以下の表現は介護記録で使用してはいけません。
- 侮辱的・差別的な表現(「わがまま」「ボケている」など)
- あいまいな表現(「ちゃんと食べた」「普通に過ごした」など)
- 感情的な表現(「イライラした」「困った」など、介助者の感情を書くのは不適切)
言い換えの表現に迷うことが多い人は、介護記録の書き方をまとめた本を1冊手元に置いておくと、困ったときにすぐ確認できます。

場面別・介護記録の例文集
ここからは、実際の介護場面ごとに、すぐに使える記録の例文を紹介します。
食事の記録
例文1(通常時):
「12:00 昼食。主食10割、副菜8割、汁物全量摂取。自力にて摂取。むせ込みなし。食後の口腔ケア実施。」
例文2(食事量が少ないとき):
「12:00 昼食。主食3割、副菜2割摂取にて中止。『食欲がない』との訴えあり。体温37.2度。看護師○○に報告済み。水分はお茶150ml摂取。」
排泄の記録
例文1(通常時):
「10:30 トイレ誘導。排尿あり。量普通。自力にてズボンの上げ下ろし可能。手洗い見守り。」
例文2(異常があるとき):
「14:00 おむつ交換時、便に血液の混入を確認。量少量。腹痛の訴えなし。バイタル正常範囲内。看護師○○に報告。経過観察の指示あり。」
入浴の記録
例文:
「10:00 一般浴にて入浴介助実施。入浴前BP130/78、体温36.4度。洗身は自力で上半身まで行い、背中と下半身は介助。入浴時間8分。入浴後の皮膚状態に異常なし。水分補給(お茶100ml)済み。」
精神面・行動の記録
例文1:
「15:00 レクリエーション(折り紙)に参加。笑顔で他の利用者と会話しながら取り組む。完成した作品を職員に見せ、『上手にできたでしょ』と発言あり。」
例文2(不穏時):
「19:30 ホール内を歩き回り、『家に帰りたい』との訴えが繰り返しあり。職員が付き添い、一緒に廊下を歩く。20:00 お茶を提供したところ落ち着き、居室にてテレビを視聴。」
事故・ヒヤリハットの記録
例文:
「16:45 居室にて転倒を発見。ベッドからトイレに向かおうとした際に滑った様子。右膝に軽度の発赤あり。痛みの訴えなし。バイタル正常。看護師○○に報告し、経過観察の指示あり。事故報告書を別途作成。」
事故やヒヤリハットの記録は、事実を正確に、時系列で、詳細に書くことが重要です。「いつ」「どこで」「どのような状況で」「どのような対応をしたか」を漏れなく記録しましょう。

介護記録を効率よく書くコツ
介護記録を書く時間がなかなか取れない、という声はよく聞きます。以下のコツで効率をアップさせましょう。
こまめにメモを取る
介助が終わるたびに、ポケットサイズのメモ帳にキーワードだけ書き留めておくと、後からまとめて記録するときにスムーズです。「10:30 トイレ 尿 OK」程度のメモでも、記録を書くときの助けになります。
テンプレートを活用する
食事・排泄・入浴・バイタルなど、定型的な記録にはテンプレートを用意しておくと便利です。変化があったところだけ詳しく書くようにすれば、時間を大幅に節約できます。
「変化があったこと」を優先的に書く
すべてを詳細に書く必要はありません。「いつもと違うこと」に焦点を当てて記録することで、重要な情報を確実に伝えられます。普段と変わらない場合は、簡潔な記録でも問題ありません。
ICTツールの活用
タブレットやスマートフォンで記録できるICTシステムを導入している施設も増えています。音声入力機能や選択式の入力フォームを活用することで、記録にかかる時間を大幅に短縮できます。

介護記録で避けるべきNGワード
介護記録には使ってはいけない表現があります。以下のNGワードに注意しましょう。
- 「ボケている」「認知がある」→「認知症の症状が見られる」「見当識障害あり」
- 「わがまま」「暴れる」→「〜を希望される」「興奮状態が見られた」
- 「させた」「やらせた」→「行っていただいた」「実施した」
- 「徘徊」→施設の方針にもよるが「ひとり歩き」とする施設も増えている
- 「不潔」→「排泄物による汚染あり」「清潔保持が必要な状態」
介護記録は利用者本人やご家族が閲覧することもあるため、読んだ人が不快に感じない表現を心がけましょう。
記録の書き方をさらに学ぶには
介護記録の書き方をもっと深く学びたい方には、以下のリソースがおすすめです。
- ささえるラボ(マイナビ介護職メディア)では、介護記録の書き方に関する実践的な記事が多数公開されています
- カイポケ(公式サイト)では、介護記録のテンプレートやICTツールの活用法が紹介されています
- 施設内の研修や、外部の介護技術研修でも記録の書き方を学べる機会があります
文例がまとまった書籍も多く出ているので、自分の施設の記録スタイルに近いものを探してみるのもおすすめです。
よくある質問(Q&A)
Q. 介護記録はどのくらいの頻度で書けばいいですか?
基本的には、ケアを実施するたびに記録するのが理想です。食事・排泄・入浴・バイタル測定・レクリエーションなど、主要なケアのタイミングで記録しましょう。特に状態の変化があった場合は、できるだけ早く記録することが大切です。
Q. 記録を間違えた場合、修正してもいいですか?
紙の記録の場合は、修正液や上書きではなく、間違えた部分に二重線を引いて訂正印を押し、横に正しい内容を書くのが基本です。電子記録の場合は、修正履歴が残る形で訂正しましょう。記録の改ざんは法的に問題になるため、適切な方法で修正することが重要です。
紙の記録が中心の職場では、黒・赤などを1本で書き分けられる多機能ボールペンをポケットに挿しておくと、訂正や色分けがしやすくなります。
Q. 利用者の言葉はそのまま記録してもいいですか?
利用者の発言は、できるだけそのままの言葉で「 」(かぎかっこ)をつけて記録するのがよいでしょう。ご本人の言葉をそのまま残すことで、精神状態や要望が正確に伝わります。ただし、不適切な言葉遣いの場合は、内容を要約して記録することもあります。
Q. 介護記録の保存期間はどのくらいですか?
介護保険法では、介護サービスの提供に関する記録はサービス提供が終了した日から2年間の保管が義務づけられています。ただし、自治体の条例によっては5年間としているところもあるため、所属する施設のルールを確認しましょう。電子記録の場合もバックアップを含めた適切な保管体制が求められます。
まとめ
介護記録の書き方のポイントを以下にまとめます。
- 記録の目的(情報共有・ケアの質向上・法的証拠)を理解する
- 5W1Hを意識して、具体的に書く
- 客観的な事実と主観的な推測を区別する
- 「いつもと違うこと」を優先的に記録する
- NGワードを避け、利用者の尊厳を守る表現を使う
- テンプレートやメモを活用して効率よく書く
介護記録は、自分が書いた記録が利用者のケアの質を左右するという意識を持つことで、自然と丁寧に書けるようになります。「伝わる記録」を目指して、日々の実践に取り組んでいきましょう。
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