「体力的にきつくなってきた」「デスクワークで落ち着いて働きたい」――介護職から事務職への転職を考える方は多い。特に腰痛や膝の痛みなど体の負担を抱えている方にとって、事務職は魅力的な選択肢だ。
介護職の経験は事務職でも活かせるポイントが多い。コミュニケーション力やマルチタスク能力、正確な記録作成スキルなど、介護現場で当たり前にやってきたことが事務職で武器になる。
この記事では、介護職から事務職に転職するための具体的な方法、おすすめの事務職の種類、そして転職を成功させるコツを解説する。

介護職から事務職に転職するメリット
体力的な負担が軽くなる
事務職はデスクワークが中心のため、介護職のような移乗介助や入浴介助といった身体的な負担がない。腰痛や身体の不調に悩んでいる方にとって、体への負担が大幅に軽減されるのは大きなメリットだ。
規則的な生活が送りやすい
多くの事務職は土日祝日休みで、夜勤もない。介護職のシフト制と比べると、生活リズムが安定しやすく、家族との時間も確保しやすくなる。
自分のペースで仕事を進められる
介護現場では利用者の状態に合わせて臨機応変な対応が求められるが、事務職は自分のペースで業務を進めやすい。計画的に仕事を組み立てたい方には向いている環境だ。
精神的なストレスが変わる
介護職特有の人間関係やクレーム対応、利用者の急変対応といったストレスから離れられる。ただし、事務職には事務職なりのストレスもあるため、完全にストレスフリーになるわけではない点は理解しておきたい。
介護職経験が活きるおすすめの事務職
事務職にもさまざまな種類がある。介護経験を活かしやすいおすすめの事務職を紹介する。
介護事務
介護経験をダイレクトに活かせるのが介護事務だ。介護保険の請求業務(レセプト作成)、利用者やその家族への対応、施設内の事務全般を担当する。介護の制度や現場の仕組みを理解していることが大きなアドバンテージになる。
介護事務管理士や介護報酬請求事務技能検定などの資格を持っていると、さらに有利に転職活動を進められる。
まずはどんな内容を学ぶのか知りたい人は、市販の介護事務テキストで中身をざっと見てみるのもひとつの方法だ。
医療事務
医療事務は病院やクリニックで受付、会計、レセプト作成を行う仕事だ。介護職として医療スタッフと連携した経験や、医療用語への理解が活かせる。医療事務の資格(メディカルクラークなど)を取得しておくとより有利だ。
一般事務
業種を問わず幅広い企業で募集がある一般事務。書類作成、データ入力、電話・来客対応などが主な業務だ。介護現場での記録作成やスケジュール管理の経験は、一般事務の業務にそのまま活きてくる。
社会福祉法人や自治体の事務職
福祉関連の法人や自治体の福祉課で働く事務職もおすすめだ。介護・福祉の知識があることで、制度に関する問い合わせ対応や申請書類の処理がスムーズに行える。
人事・採用事務
介護業界は慢性的な人手不足で、介護施設の人事・採用担当は需要がある。介護現場を知っているからこそ、求職者に対して説得力のある情報提供ができる。

介護職から事務職に転職するための具体的なステップ
ステップ1:パソコンスキルを身につける
事務職で必須となるのがパソコンスキルだ。最低限、以下のスキルを身につけておきたい。
- Word:ビジネス文書の作成(社内文書、報告書など)
- Excel:表計算、グラフ作成、関数の基本操作
- メール:ビジネスメールの基本的な書き方
- タイピング:ある程度のスピードで正確に入力できること
介護現場でも記録のデジタル化が進んでおり、タブレットやパソコンでの記録入力に慣れている方は、基礎的なPCスキルはすでに身についているケースが多い。
Excelに苦手意識がある人は、MOS対策のテキストを1冊使って操作を順番に確認していくと、学ぶ範囲がはっきりして進めやすい。
ステップ2:役立つ資格を取得する
事務職への転職で有利になる資格としては以下が挙げられる。
- MOS(Microsoft Office Specialist):Word、Excelの操作スキルを証明する
- 介護事務管理士:介護事務に特化した資格。通信講座で取得可能
- 日商簿記検定3級:経理事務を目指すなら持っておきたい
- 医療事務技能審査試験(メディカルクラーク):医療事務を目指す場合に有効
- 秘書検定:ビジネスマナーの証明として評価される
ステップ3:履歴書・職務経歴書を作り込む
介護職から事務職への転職では、「なぜ転職するのか」「介護経験をどう活かせるか」を明確に伝えることが重要だ。
職務経歴書では、介護記録の作成経験や、シフト管理、備品発注などの事務的な業務経験を具体的に記載しよう。「介護しかやっていなかった」のではなく、「介護の中でも事務的な業務を数多くこなしてきた」というアピールが効果的だ。
異業種への書類づくりに慣れていない人は、職務経歴書の書き方をまとめた本で構成や言い回しの例を確認しておくと書きやすくなる。
ステップ4:転職エージェントを活用する
未経験から事務職への転職は競争率が高いため、転職エージェントの力を借りるのがおすすめだ。介護業界に特化したエージェントだけでなく、幅広い職種を扱う総合型のエージェントも併用するとよい。

介護職から事務職への転職で注意すべきこと
給料が下がる可能性がある
一般的に、未経験の事務職は介護職と比べて給料が下がるケースがある。特に夜勤手当や処遇改善手当がなくなる分、手取りが減ることも想定しておきたい。ただし、残業代やボーナスの支給体系は企業によって異なるため、年収ベースで比較することが大切だ。
事務職は倍率が高い
事務職は人気が高く、特に未経験からの応募は競争が激しい。書類選考で落ちることも珍しくないため、複数の求人に同時に応募することをおすすめする。
複数の企業に応募するなら、履歴書は少し多めにストックしておくと、締め切りが重なったときにも慌てずに済む。
デスクワーク特有のストレスがある
介護職から事務職に転職した方の中には、「座りっぱなしがつらい」「人と話す機会が減って寂しい」と感じる方もいる。自分の性格や適性をよく考えた上で判断しよう。
事務職への転職は、介護職の処遇改善加算や資格手当がなくなることを意味する。転職前に収入シミュレーションをしっかり行い、生活に支障がないか確認しておこう。
介護職から事務職に転職した人が感じるギャップ
実際に介護職から事務職に転職した方の声から、入職後に感じやすいギャップをまとめた。事前に知っておくことで、転職後のストレスを軽減できるはずだ。
多くの方が感じるのが「人と接する機会の減少」だ。介護現場では利用者や家族とのコミュニケーションが常にあるが、事務職ではパソコンに向かう時間が長くなる。人との関わりにやりがいを感じていた方ほど、このギャップは大きい。一方で、「静かな環境で集中できるのが快適」という声もあり、感じ方は人それぞれだ。
また、「体が楽になった分、運動不足を感じるようになった」という声も多い。デスクワーク中心になると、意識的に体を動かす習慣を作ることが大切だ。通勤時に一駅分歩く、昼休みにストレッチをするなど、小さな工夫で体の不調を防げる。
座っている時間が長くなることに備えて、椅子に敷くクッションで座り心地を整えておくのもひとつの工夫だ。
Q&A:介護職から事務職への転職でよくある疑問
Q1. 介護事務は未経験でもなれる?
介護事務は未経験でも応募できる求人が多い。ただし、介護保険制度の基礎知識があるとスムーズに業務に入れるため、介護職経験者は有利だ。介護事務管理士の資格を取得しておくとさらに評価が上がる。
Q2. 事務職に転職して後悔することはある?
「やりがいを感じにくい」「単調な作業が多い」と感じる方もいる。介護職のように「ありがとう」と直接言ってもらえる機会は減る傾向にある。ただし、事務職には事務職ならではのやりがい(組織を裏方で支える達成感など)がある。
Q3. 40代・50代でも事務職に転職できる?
40代・50代からの事務職転職は、20代・30代と比べるとハードルが上がるのは事実だ。しかし、介護事務や福祉系の事務職であれば、年齢よりも経験や知識が評価されるケースも多い。福祉関連の法人や自治体の臨時職員なども狙い目だ。

まとめ
介護職から事務職への転職は、体力的な負担の軽減や規則的な生活リズムの確保など、多くのメリットがある。特に介護事務や医療事務、福祉法人の事務職は、介護経験をダイレクトに活かせるおすすめの選択肢だ。
転職を成功させるためには、パソコンスキルの習得、関連資格の取得、そして介護経験を事務スキルとしてアピールする工夫が重要になる。給料や働き方の変化も考慮しつつ、自分に合ったキャリアプランを描いてほしい。
介護事務に転職した場合の1日の流れ
介護事務の仕事がイメージしやすいように、一般的な1日の流れを紹介する。
- 9:00 出勤・メールチェック:利用者や家族からの問い合わせ対応、施設内の連絡事項確認
- 10:00 レセプト作成・データ入力:介護保険請求に必要な書類を作成する。月末月初は特に忙しい
- 12:00 昼休憩:デスクワーク中心のため、決まった時間に休憩が取りやすい
- 13:00 来客・電話対応:ケアマネジャーや利用者家族からの問い合わせに対応する
- 15:00 経理・備品管理:施設の経費処理や、消耗品の在庫管理・発注を行う
- 17:00 翌日の準備・退勤:明日の予定確認と書類の整理をして退勤
介護現場と比べると、自分のペースで業務を進めやすく、体力的な負担が大幅に軽減されるのが介護事務の特徴だ。ただし、レセプト提出期限の前後は業務が集中するため、時期によって忙しさに波がある点は理解しておきたい。
来客や電話の対応も多い仕事なので、ビジネスマナーを体系的に確認しておきたい人は、秘書検定のテキストを読んでおくと役立つ場面がある。

介護職からのキャリアチェンジについて詳しく知りたい方は、ブレイブの介護キャリアチェンジガイドも参考になる。また、事務系の資格取得については中央職業能力開発協会(JAVADA)のサイトで最新の情報を確認できる。


