介護の仕事をしていて、手首や指に痛みを感じたことはありませんか。それは腱鞘炎のサインかもしれません。介護職は利用者の身体を支える動作が多く、手首や指への負担が日常的に蓄積しやすい職業です。
この記事では、介護職が腱鞘炎になりやすい理由から、予防法、痛みが出たときの対処法まで、具体的にわかりやすく解説します。「たかが手首の痛み」と軽く見ていると、症状が悪化して仕事に支障をきたすこともあります。早めの予防と対策が大切です。

腱鞘炎とは?基本を押さえよう
腱鞘炎とは、指や手首の腱とそれを包む腱鞘に炎症が起こる状態のことです。腱は筋肉と骨をつなぐ組織で、腱鞘はそれを包んでスムーズな動きを助けるトンネルのような組織です。この腱鞘が炎症を起こすと、腱の滑りが悪くなり、痛みや腫れ、動きにくさといった症状が現れます。
代表的な腱鞘炎には以下の種類があります。
- ドケルバン病:親指の付け根から手首にかけて痛むタイプ。物をつかむ動作で痛みが強くなる
- ばね指(弾発指):指の曲げ伸ばしで引っかかる感覚があり、ひどくなると指が動かなくなる
介護職が腱鞘炎になりやすい理由
介護の仕事には、手首や指に大きな負荷がかかる場面がたくさんあります。
移乗介助や体位変換での負担
利用者の身体を持ち上げたり、向きを変えたりする動作では、手首に大きな力が加わります。特に大人一人分の体重を手首と腕で支えることは、腱と腱鞘に相当なストレスをかけます。介護度の高い利用者が多い施設では、その負担はさらに増します。
おむつ交換や着脱介助の繰り返し
おむつ交換では、テープを引っ張ったり、利用者の身体を横に向けたりといった細かい手の動きが連続します。衣服の着脱介助でも、ボタンの留め外しや袖を通す動作で指を酷使します。こうした同じ動作の繰り返しが、腱鞘炎の大きな原因になります。
繰り返しの動作で手首に違和感が出てきた段階で、手首用のサポーターを取り入れて負担を和らげる工夫をしている人もいます。
入浴介助での握り動作
入浴介助では、利用者の身体を支えながら洗体・洗髪を行います。滑りやすい環境の中でしっかり握る必要があるため、手首への負荷は非常に高いです。
不良姿勢の影響
猫背や巻き肩などの不良姿勢は、腕から手首にかけての筋肉を過度に緊張させます。これにより腱鞘へのストレスが増加し、腱鞘炎のリスクが高まります。

腱鞘炎を予防するための具体的な方法
腱鞘炎は、日頃の心がけでかなりの確率で予防できるものです。以下のポイントを意識して、手首や指への負担を減らしていきましょう。
手首のストレッチを習慣にする
業務の合間や休憩時に、手首のストレッチを行いましょう。腕を前に伸ばし、もう片方の手で指を手前に引っ張るストレッチは、手首の腱を伸ばすのに効果的です。1回10〜15秒を、左右それぞれ2〜3セット行うのが目安です。
正しい介助動作を身につける
手首の力だけで利用者を支えようとすると、腱鞘への負担が集中します。体全体の力を使って介助するボディメカニクスの技術を身につけることで、手首への負荷を分散できます。研修や勉強会を活用して、正しい介助動作を再確認しましょう。
手首用サポーターを活用する
手首の固定用サポーターやテーピングを使うことで、腱鞘への負担を軽減できます。薄手で動きやすいタイプを選べば、介護業務中にも使えます。痛みが出始めた初期の段階で使い始めると、悪化の予防に効果的です。
福祉用具で負担を軽減する
スライディングシートやリフトなどの福祉用具を積極的に活用して、手や腕への負担を減らしましょう。「自力で頑張る」ことが美徳のように思われがちですが、道具に頼ることは自分の体を守るための正しい判断です。
職場にスライディングシートが足りない場合は、どんな商品があるか調べたうえで、備品として導入できないか相談してみるのも一つの方法です。
業務ローテーションを意識する
同じ動作を長時間続けることが腱鞘炎の大きな原因です。可能であれば、入浴介助・食事介助・記録作成など、異なる業務をバランスよくローテーションすることで、特定の部位への集中的な負担を避けられます。

腱鞘炎の初期症状と対処法
腱鞘炎は早期に対処すれば、悪化を防ぐことができます。以下の初期症状に気づいたら、すぐに対策を始めましょう。
こんな症状が出たら要注意
- 手首や指の付け根に鈍い痛みがある
- 物をつかむときにズキンとした痛みが走る
- 朝起きたとき、指がこわばって動かしにくい
- 指の曲げ伸ばしで引っかかる感覚(ばね現象)がある
- 手首や親指の付け根が腫れている
初期段階の対処法
まずは患部を安静にすることが最も重要です。痛みがあるのに無理して作業を続けると、症状が悪化します。アイシング(冷やす)も炎症を抑えるのに有効で、痛みが出たら15〜20分ほど氷嚢を当ててみましょう。
氷嚢は家にひとつ置いておくと、手首に限らずいざというときに使えて便利です。
市販の消炎鎮痛剤(湿布やクリーム)も痛みの軽減に役立ちますが、痛みが2週間以上続く場合や、日常生活に支障が出ている場合は、整形外科を受診しましょう。
参考:大正製薬「腱鞘炎の原因・症状・治し方・対処法・予防法」
腱鞘炎が悪化した場合の治療法
初期の対処で改善しない場合は、医療機関での治療が必要になります。
注射による治療
腱鞘内にステロイド注射を行うことで、炎症を素早く抑える方法があります。即効性があり、多くの場合1〜2回の注射で症状が改善します。
手術による治療
注射でも改善しない場合や繰り返し再発する場合は、腱鞘を切開する手術が検討されることがあります。手術自体は日帰りで行えることが多く、術後の回復も比較的早いです。
参考:介護職は腱鞘炎になりやすい?職業病と言われる理由や予防
腱鞘炎に関するよくある質問(Q&A)
Q. 腱鞘炎でも介護の仕事は続けられますか?
A. 適切な治療と予防策を講じれば、仕事を続けることは可能です。ただし、無理を続けると悪化するため、痛みがある場合は上司に相談して業務内容を調整してもらうことも大切です。
Q. 腱鞘炎は労災として認められますか?
A. 業務上の反復動作が原因で腱鞘炎を発症した場合、労災として認定される可能性があります。医師の診断書を取得し、労働基準監督署に申請しましょう。
Q. 市販のサポーターと医療用サポーターの違いは?
A. 医療用サポーターは、医師の指示のもとで処方されるもので、固定力や素材が専門的に設計されています。症状が軽い段階では市販品でも十分ですが、痛みが強い場合は受診して医師に相談するのが安心です。
参考:MEDIAID Online「腱鞘炎の治し方とは?原因と症状」
腱鞘炎予防に役立つおすすめグッズ
日常的に使えるグッズを活用することで、腱鞘炎の予防効果をさらに高めることができます。
手首用サポーター
手首を適度に固定してくれるサポーターは、腱鞘炎予防の定番アイテムです。薄手でフィット感のあるタイプを選べば、介護業務中にも違和感なく使用できます。バンテリンやザムストなどのメーカーから、さまざまな種類が販売されています。
テーピング
テーピングは手首の動きを制限しすぎずに、適度なサポートを提供してくれます。自分で簡単に巻けるキネシオテープがおすすめで、動画サイトなどで巻き方を学ぶことができます。
ハンドエクササイザー
握力を鍛えるハンドグリップやシリコンボールなどのエクササイザーを使って、手や指の筋力を強化する方法もあります。ただし、痛みがある状態でのトレーニングは逆効果になるため、痛みがない時期に予防的に行うのがポイントです。

介護の現場で実践できる手首への負担軽減テクニック
ちょっとした工夫で、手首への負担をぐっと減らすことができます。
握る力を分散させる
利用者の身体を支えるとき、指先だけで握るのではなく、手のひら全体を使って支える意識を持ちましょう。手のひらを広げて接触面積を大きくすることで、一箇所にかかる力が分散されます。
両手を均等に使う
どうしても利き手に頼りがちですが、両手をバランスよく使うことを心がけましょう。片方の手だけに負荷が集中すると、腱鞘炎のリスクが偏って高まります。
こまめに手を休ませる
連続して同じ動作をする場合は、合間に手をブラブラさせたり、握ったり開いたりする動作を入れて血行を促しましょう。30分に1回は手首を休ませることを目安にすると良いです。
まとめ
介護職の腱鞘炎は、移乗介助やおむつ交換といった日常業務の繰り返しによる手首・指への負担が主な原因です。日頃からストレッチやサポーターの活用、正しい介助動作を心がけることで、発症リスクを大きく下げることができます。
痛みや違和感を感じたら、「このくらい大丈夫」と我慢せず、早めに対処しましょう。自分の体を守ることが、利用者への良いケアにもつながるのです。



