冬は高齢者にとって、寒さによる体調悪化や乾燥によるスキントラブルが増える季節。介護施設では、室温管理だけでなく、ヒートショック予防や感染症対策、保湿ケアなど、夏とはまた異なる対策が求められる。
この記事では、冬の介護施設で実践すべき防寒対策と乾燥ケアのポイントを、環境管理から衣類選び、スキンケアまで幅広くまとめていく。

冬に高齢者が注意すべき健康リスク
冬場の高齢者には、以下のような健康リスクが高まる。介護職員はこれらを理解したうえで、日々のケアに取り組むことが大切だ。
- ヒートショック:暖かい部屋から寒い廊下・トイレ・浴室への移動で急激な血圧変動が起こり、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まる
- 低体温症:体温調節機能が低下した高齢者は、気づかないうちに体温が下がる
- 感染症:インフルエンザ・ノロウイルスなどの流行時期。高齢者は重症化しやすい
- 乾燥によるスキントラブル:かゆみ・ひび割れ・湿疹が起こりやすくなる
- 脱水:暖房による乾燥で体内の水分が失われやすい。冬場は「隠れ脱水」に注意
- 関節痛・筋肉のこわばり:寒さで体が縮こまり、転倒のリスクが高まる
介護施設の冬の防寒対策
1. 室温と湿度の適切な管理
冬場の介護施設の室温は20~22℃、湿度は50~60%を目安に管理することが推奨されている。暖房を使うと空気が乾燥しやすいため、加湿器の活用が不可欠だ。
- 各居室・共用部に温湿度計を設置し、定期的にチェックする
- 加湿器を使用する場合は、定期的に清掃してカビの繁殖を防ぐ
- 廊下やトイレ、脱衣所にも暖房を設置し、温度差を最小限にする
- 換気は短時間で行い、室温が極端に下がらないようにする
加湿器は、タンクや内部を手入れしやすい構造のものを選ぶと、毎日の清掃の負担が軽くなる。
2. ヒートショック対策を徹底する
ヒートショックは入浴時に発生することが多いため、特に浴室周りの温度管理が重要になる。
- 脱衣所を事前に暖めておく(暖房器具やヒーターの設置)
- 浴室も入浴前にシャワーで温めて室温を上げる
- お湯の温度は38~40℃のぬるめに設定する(熱すぎるお湯は血圧変動を大きくする)
- 入浴前後にバイタルチェックを行い、異常がないか確認する
- 長湯を避け、入浴時間は10~15分程度にする

3. 衣類選びの工夫
高齢者の冬の衣類は、保温性と着脱のしやすさの両立が大切。
- 肌に直接触れるインナーは、綿やウール混など肌に優しい素材を選ぶ
- 薄手の衣類を重ね着する方が、厚手1枚より温度調節がしやすい
- 締め付けの強い靴下やゴムは血流を阻害するため避ける
- 靴下+室内履きで足元の冷えを防ぐ(ただし、滑りやすい靴下は転倒リスクがある)
- 外出時はマフラーや手袋、帽子で首・手・頭を保護する
靴下で過ごす時間が長い方には、足裏に滑り止めが付いたタイプを選ぶと、足元の冷えと滑りの両方に気を配りやすい。
4. 感染症対策の強化
冬場はインフルエンザやノロウイルスの流行時期。介護施設は集団生活の場であるため、一人の感染が施設全体に広がるリスクがある。
- 手洗い・うがい・アルコール消毒の徹底
- 面会者への体調チェックと手指消毒の依頼
- 嘔吐物の処理は次亜塩素酸ナトリウムを使用する
- スタッフのワクチン接種を推奨する
- 利用者さんの体調変化を見逃さないよう、毎日の検温・健康観察を徹底する
冬の乾燥ケア|高齢者のスキンケアのポイント
高齢者の肌は、加齢に伴い皮脂の分泌量が減り、バリア機能が低下している。冬の乾燥した空気が加わると、かゆみ・ひび割れ・皮膚炎などのトラブルが起きやすくなる。
保湿ケアの基本
- 入浴後は肌が乾燥する前(5分以内)に保湿剤を塗る
- 保湿剤はクリームタイプやワセリンが効果的。ローションタイプは乾燥肌には物足りない場合がある
- 塗り方は「肌にすり込まず、やさしく広げる」のが正しい方法
- 特にすねや腕など、乾燥しやすい部位は重点的にケアする
- かゆみが強い場合は皮膚科の受診を検討する
保湿ケア用のワセリンは、大きめの容器を施設にそろえておくと、入浴後にすぐ使えて便利だ。
入浴時の注意点
- 熱いお湯は皮脂を奪い、乾燥を悪化させるため、38~40℃のぬるめがベスト
- ボディソープは低刺激性のものを使い、ゴシゴシ洗わない
- 入浴の頻度は毎日でなくてもOK。週2~3回の入浴+清拭で十分なケースもある

冬の水分補給も忘れずに
冬は汗をかかないから脱水にならないと思いがちだが、これは大きな間違い。暖房で乾燥した空気の中では、呼気や皮膚から水分が蒸発する「不感蒸泄」によって、気づかないうちに脱水が進むことがある。
- 冬でも1日1,000~1,500mlの水分摂取を目指す
- 温かいお茶やスープなど、体を温めながら水分を取れるものが効果的
- 「のどが渇いた」と感じたときには既に脱水が始まっている可能性があるため、定時に水分を提供する
冬の転倒予防対策
寒さで体がこわばると、筋肉や関節の動きが悪くなり転倒リスクが高まる。
- 起床時はいきなり立ち上がらず、ベッドに座って体をほぐしてから動く
- 床が冷たいとつま先立ちになりやすいため、室内履きを履く
- 廊下や浴室の結露で床が滑りやすくなるため、こまめに拭く
- 外出時は路面の凍結に注意し、滑りにくい靴を選ぶ
よくある質問(Q&A)
Q. 暖房が苦手な利用者さんへの対応は?
暖房の温風が直接体に当たるのを嫌がる方には、風向きの調整やパネルヒーターなどの輻射式暖房が有効。また、電気毛布や湯たんぽで局所的に温めるのも一つの方法だ。ただし低温やけどには注意が必要。湯たんぽを使う場合は、厚手のカバーに入れて体から少し離して置くのが基本だ。
Q. 夜間の寒さ対策はどうすればいいですか?
夜間は室温が下がりすぎないよう、エアコンやヒーターのタイマーを活用する。室温が15℃以下になると低体温症のリスクが高まるため、最低でも18℃以上を保ちたい。寝具は掛け布団を重ねすぎると体が動かしにくくなるため、軽くて保温性の高い羽毛布団などがおすすめだ。
Q. 乾燥肌がひどい場合はどうすればいいですか?
市販の保湿剤でケアしても改善しない場合は、皮膚科の受診を検討しよう。医師が処方するヘパリン類似物質の保湿剤やステロイド外用薬の方が効果的な場合がある。自己判断でかゆみ止めを長期間使うのは避けた方がいい。
冬場のレクリエーションの工夫
寒い季節でも利用者さんに楽しんでもらえるレクリエーションを取り入れよう。
- 室内で体を動かすレク:椅子に座ったままできる体操、ゴム体操、ボウリングゲーム
- 季節行事レク:クリスマス会、餅つき、書き初め、節分の豆まき
- 温かい食レク:お汁粉作り、甘酒作り、焼き苋パーティー
- 手先を使うレク:編み物、毛糸を使ったリース作り、ちぎり絵
冬は外出の機会が減りがちだが、室内でも季節感を楽しめるレクを用意することで、利用者さんの気分転換やリハビリ効果が期待できる。季節ごとのネタに困ったときは、介護レクの本を1冊手元に置いておくと企画を立てやすい。

訪問介護での冬の注意点
訪問介護の場合、利用者さんの自宅の環境は施設とは大きく異なる。冬場は特に以下の点に注意したい。
- 暖房が十分でない家庭もある。室温が低すぎる場合はケアマネジャーに報告し、暖房器具の導入を検討してもらう
- 灯油ストーブやガスファンヒーターを使用している場合は、換気が十分に行われているか確認する(一酸化炭素中毒の予防)
- 浴室の暖房がない家庭では、入浴介助前に浴室を温めてから介助に入る
- 利用者さんが電気毛布やこたつで長時間過ごしている場合は、低温やけどのリスクを確認する
- 路面凍結時の通勤・移動に注意する(転倒事故は介護職員自身にも起こる)
冬の夜勤で気をつけたいこと
冬場の夜勤は、室温管理が特に重要になる。夜間はスタッフの人数も少ないため、効率的に対応する必要がある。
- 巡視時に各居室の室温をチェックする
- 布団を蹴ってしまう利用者さんには、スリーパー(着る毛布)の使用を検討する
- 夜間のトイレ誘導時は、廊下やトイレが十分に温まっているか確認する
- 加湿器の水量を確認し、空焚きを防ぐ
- 感染症の症状(発熱・嘔吐・下痢)が出た場合の緊急対応マニュアルを確認しておく
着る毛布(スリーパー)は、前開きで着せやすく、洗濯しやすい素材のものを選ぶと施設でも使い回しやすい。
冬の夜勤は「寒さ×少人数」のダブルプレッシャーがかかるが、事前にチェックポイントを把握しておくことで、落ち着いて対応できるようになる。
冬場に施設で常備したい備品
冬を安全に乗り切るために、施設に常備しておきたいアイテムを確認しよう。
- 加湿器:各居室・共用部に設置し、湿度50~60%をキープする
- 保湿剤(クリーム・ワセリン):入浴後の保湿ケアに欠かせない
- 温湿度計:各部屋の環境を数値で管理するために必須
- 使い捨てカイロ:外出介助時や冷えを訴える利用者さんへの応急対応に
- 次亜塩素酸ナトリウム消毒液:ノロウイルス対策の嘔吐物処理に必要
- スリッパ(滑り止め付き):結露した廊下での転倒防止に
これらの備品は秋のうちに在庫を確認し、冬本番に備えておくと安心だ。特にノロウイルス対策の消毒液は、流行が始まってからでは遅いため、早めの準備が肝心。外出介助で使う使い捨てカイロも、箱買いしておくと在庫切れの心配が減る。
入浴以外の清潔保持の工夫
冬場は入浴の頻度を減らす施設もあるが、清潔保持は欠かせない。入浴しない日でも、温かいタオルでの清拭や足浴を行うことで、利用者さんの清潔感と心地よさを保てる。足浴はリラックス効果も高く、血行促進や冷え改善にも効果的だ。お湯の温度は38~40℃のぬるめに設定し、保湿剤を塗るところまでをセットで行うと乾燥対策にもなる。
まとめ
冬の介護施設では、防寒対策・ヒートショック予防・感染症対策・乾燥ケアの4つを柱に、利用者さんの安全と快適さを守る必要がある。高齢者は自分では寒さや乾燥に気づきにくいため、介護職員のきめ細かい観察と先回りのケアが何よりも重要だ。
室温管理・保湿ケア・水分補給・転倒予防を日々のルーティンに組み込み、利用者さんが安心して冬を過ごせる環境を整えていこう。
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参考リンク:高齢者が冬に注意したい健康管理(LIFULL介護)
参考リンク:寒い時期の介護対策(あなぶきの介護)
参考リンク:高齢者施設の冬の寒さ対策(ささえるラボ)



