「介護職って退職金はもらえるの?」「いくらくらいが相場なの?」と気になっている方は多いのではないだろうか。介護業界の退職金事情は、勤め先の規模や加入している退職金制度によって金額に大きな差が出るのが実情だ。
この記事では、介護職の退職金の相場を勤続年数別に解説するとともに、主な退職金制度の仕組みや、退職金を増やすための方法についても紹介する。将来の資金計画に役立ててほしい。

介護職の退職金の相場|勤続年数別
介護職の退職金は、勤務先の規模や退職金制度の種類によって異なるが、一般的な相場は以下の通りだ。
勤続年数別の退職金相場(自己都合退職の場合)
- 勤続3年:約10万~30万円
- 勤続5年:約20万~50万円
- 勤続10年:約50万~130万円
- 勤続15年:約100万~200万円
- 勤続20年:約130万~300万円
- 勤続25年:約200万~400万円
中小企業退職金共済(中退共)の2023年12月における退職一時金の平均支給額は133万5,232円だ。また、勤続25年の退職金相場は自己都合退職で約407万円というデータもある。
上記はあくまで目安であり、実際の金額は勤務先の退職金制度や掛金額、退職理由(自己都合・会社都合)によって大きく異なる。退職前に勤務先の制度内容を確認しておくことが大切だ。
将来の資金計画を立てるなら、まずは毎月の収支を家計簿で見える化しておくと、退職金をどう位置づけるか考えやすくなる。

介護業界の主な退職金制度
1. 中小企業退職金共済(中退共)
中退共は、中小企業向けの退職金制度で、介護業界で最も普及している退職金制度のひとつだ。事業主が毎月一定額の掛金を納付し、退職時に中退共から直接従業員に退職金が支払われる。
- 掛金月額:5,000円~30,000円の16段階
- 介護業界では月額5,000円~10,000円が多い
- 掛金月額10,000円で10年加入した場合の基本退職金:約126万5,600円
- 掛金月額10,000円で20年加入した場合の基本退職金:約266万6,600円
- 掛金月額10,000円で30年加入した場合の基本退職金:約421万3,100円
2. 社会福祉施設職員等退職手当共済
社会福祉法人が加入できる退職金制度で、独立行政法人福祉医療機構(WAM)が運営している。社会福祉法人で働く場合に適用されることが多い。掛金は事業主負担で、公費助成もある。
3. 企業独自の退職金制度
大手介護法人では、企業独自の退職金制度を設けているところもある。計算方法は法人ごとに異なるが、一般的には「退職時の基本給 × 勤続年数 × 給付率」で算出されることが多い。
自分の退職金をざっくり試算してみるときは、手元に電卓を置いて計算式に当てはめてみるとイメージしやすい。
4. 確定拠出年金(企業型DC)
企業が毎月掛金を拠出し、従業員が自分で運用する制度だ。介護業界ではまだ導入企業は少ないが、大手法人を中心に導入が進んでいる。
退職金制度がない場合もある?
残念ながら、すべての介護施設に退職金制度があるわけではない。医療・福祉分野では退職一時金制度のみを導入している企業が86.9%と高い割合だが、そもそも退職金制度を設けていない施設も存在する。
転職や就職の際には、以下のポイントを事前に確認しておこう。
- 退職金制度の有無
- 加入している退職金制度の種類
- 退職金の受給要件(勤続何年以上が条件か)
- 計算方法や金額の目安
お金まわりの質問は切り出しにくいので、介護職向けの面接対策本で聞き方の例を確認しておくと安心だ。

退職金の受給要件
退職金の受給には、一般的に最低勤続年数の要件が設けられている。
- 自己都合退職の場合:勤続3年以上を要件とする企業が最も多い(約50%)
- 会社都合退職の場合:勤続1年以上で支給されるケースが多い
- 中退共の場合:加入12か月以上で退職金が発生(12か月未満は不支給)
短期間で退職すると退職金が受け取れない場合があるので、転職のタイミングも考慮したい。
退職金を増やすための方法
長く勤続する
退職金は勤続年数に比例して増えるのが基本だ。頻繁に転職すると、その都度退職金がリセットされてしまうため、長く働ける職場を選ぶことが退職金を増やす最もシンプルな方法。
退職金制度が充実した施設に転職する
退職金制度の有無や掛金額は施設によって異なる。転職時に退職金制度の内容を比較検討し、より条件の良い施設を選ぶことも有効だ。
個人で資産形成も検討する
退職金だけに頼らず、iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(つみたて投資枠)などを活用して、自分でも老後資金を準備しておくと安心だ。
制度の仕組みがよくわからないうちは、iDeCoやNISAの入門書で基本を押さえてから始めると判断しやすい。

退職金にかかる税金
退職金には「退職所得控除」という大きな税制優遇がある。
- 勤続20年以下:40万円 × 勤続年数(最低80万円)
- 勤続20年超:800万円 + 70万円 ×(勤続年数 – 20年)
例えば勤続10年の場合、400万円まで非課税。勤続20年なら800万円まで非課税になる。介護職の退職金は控除額の範囲内に収まるケースが多く、実質的に税金がかからないことも多い。
よくある質問(Q&A)
Q. パートや派遣でも退職金はもらえる?
A. パートの場合は施設の制度次第だが、中退共に加入していればパートでも対象になるケースがある。派遣の場合は、派遣元(派遣会社)の退職金制度が適用される。中退共の公式サイトで詳細を確認できる。
Q. 退職金制度がない施設は避けるべき?
A. 退職金制度がなくても、その分月給が高かったり、他の福利厚生が充実していたりする場合もある。退職金だけでなく、給与・手当・福利厚生を総合的に判断しよう。
Q. 退職金はいつもらえる?
A. 企業独自の制度の場合は退職後1~2か月以内が一般的。中退共の場合は、退職後に請求手続きを行い、約4週間後に振り込まれる。WAMの退職手当共済事業の場合も同様に請求が必要だ。
退職金制度のある施設の見つけ方
退職金制度が充実した施設を見つけるには、いくつかのポイントがある。
求人票のチェックポイント
求人票に「退職金制度あり」と記載されている場合でも、制度の種類や掛金額まで確認することが大切だ。面接時に以下の質問をしてみよう。
- 「退職金制度はどの制度に加入していますか?(中退共、WAMなど)」
- 「掛金月額はいくらですか?」
- 「退職金の受給要件は勤続何年以上ですか?」
- 「過去の支給実績はどのくらいですか?」
面接で聞いた内容は小さなメモ帳に書き留めておくと、複数の施設を比べるときに役立つ。
社会福祉法人を狙う
社会福祉法人は、社会福祉施設職員等退職手当共済に加入していることが多い。民間企業と比べて退職金制度が整っている傾向がある。転職の際に法人の種類を確認するのもひとつの方法だ。
大手法人を検討する
大手介護法人では、企業独自の退職金制度を設けているところも多い。中には確定拠出年金(企業型DC)を導入している法人もあり、将来の資産形成にプラスになる。

退職金と転職の関係|知っておきたいポイント
転職すると退職金はリセットされる
一般的に、退職金は勤続年数に基づいて計算されるため、転職するたびにゼロからのスタートになる。頻繁に転職すると、トータルの退職金額は少なくなりがちだ。
退職金の「ポータビリティ」はない
中退共から中退共への移行は可能だが、社会福祉施設職員等退職手当共済から中退共への引き継ぎはできない。転職先の退職金制度が異なる場合、前職の退職金を一度受け取り、新たにスタートする形になる。
退職金と年金のバランスを考える
退職金だけでなく、厚生年金やiDeCo、NISA(つみたて投資枠)などと組み合わせて、老後の資金を総合的に計画することが大切だ。介護職の場合、退職金だけで老後を賄うのは難しいケースが多いため、早い段階から資産形成を始めておくことをおすすめする。
まとめ
介護職の退職金は、勤続年数と加入している退職金制度によって金額が大きく変わる。勤続10年で約50~130万円、20年で約130~300万円が一般的な相場だ。
退職金制度には中退共、社会福祉施設職員等退職手当共済、企業独自制度などがあり、受給要件も施設によって異なる。転職の際は退職金制度の有無と内容を確認し、長く働ける環境を選ぶことが退職金を最大化するポイントだ。


