介護職として働きながら妊娠・出産を迎えるとき、「産休や育休をちゃんと取れるのかな」「復帰した後にうまくやっていけるのかな」と不安を感じる方は少なくありません。体力を使う仕事だけに、妊娠中の働き方や復帰後のシフトなど、気になることがたくさんありますよね。
この記事では、介護職における産休・育休の制度や取得方法から、スムーズに職場復帰するためのポイントまで、知っておきたい情報をわかりやすくまとめました。

産休・育休の基本的な仕組みをおさらい
まずは、産休と育休の基本的な制度を確認しておきましょう。介護職であっても他の職業と同じように、これらの制度を利用することができます。
産前産後休業(産休)とは
産休は労働基準法で定められた制度で、すべての女性労働者が取得できます。雇用形態に関係なく、正社員でもパートでも派遣でも対象になります。
産休の期間
- 産前休業:出産予定日の6週間前(双子以上の場合は14週間前)から取得可能。本人の申請が必要
- 産後休業:出産日の翌日から8週間は就業禁止(本人が希望し医師が認めた場合は6週間経過後から就業可能)
産後6週間は本人が希望しても働くことができません。これは母体の回復を守るための規定です。
育児休業(育休)とは
育休は育児・介護休業法に基づく制度で、子どもが1歳になるまで取得できるのが原則です。保育園に入れないなどの事情がある場合は、最長で子どもが2歳になるまで延長可能です。
育休は男性も取得でき、近年は「パパ育休(産後パパ育休)」として、出生後8週間以内に最大4週間の休業が取れる制度も設けられています。
手続きやお金の流れをまとめて確認したい方は、産休・育休の制度を解説した本を1冊用意しておくと、申請のときに見返せて便利です。
介護職の産休・育休取得の現状
介護職における産休・育休の取得状況はどうなっているのでしょうか。
介護労働安定センターの調査によると、介護事業所の多くが産休・育休制度を整備しており、「有給休暇が取得しやすい環境の整備」を行っている事業所は78.7%に達しています。また、離職率も年々低下しており、記事執筆時点では12.4%と全産業平均を下回る水準です。
一方で、小規模な施設や訪問介護事業所では、人員に余裕がないために「制度はあるけど使いにくい」という声があるのも現実です。

妊娠がわかったらやるべきこと
介護職として働きながら妊娠がわかったら、以下の手順で進めていくとスムーズです。
ステップ1:上司への報告
妊娠が判明したら、できるだけ早い段階で直属の上司に報告しましょう。特に介護の仕事は身体介助など体に負担がかかる業務が多いため、安全のためにも早めの報告が大切です。安定期に入る前でも、上司にだけは伝えておくことをおすすめします。
ステップ2:業務内容の調整を相談する
妊娠中は、移乗介助や入浴介助など、体に大きな負担がかかる業務を避ける必要があります。母体健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)を活用すれば、医師からの指導内容を施設に伝えやすくなります。
ステップ3:産休・育休の申請手続き
産休は産前6週間前から取得可能ですが、申請のタイミングは施設によって異なります。一般的には遅くとも産休開始の1か月前までに申請書を提出するケースが多いです。育休の申請は、原則として休業開始予定日の1か月前までに行います。
ステップ4:引き継ぎの準備
担当している利用者さんの情報や日常業務のマニュアルを整理しておくと、休業中の同僚の負担が軽くなります。できれば産休に入る2〜3か月前から引き継ぎを始めるとよいでしょう。
引き継ぎ資料は利用者さんごと・業務ごとにクリアファイルで分けておくと、受け取る側も探しやすくなります。
妊娠中の介護職が知っておくべき法的保護
妊娠中の労働者には、さまざまな法的保護が用意されています。
妊娠中の介護職員を守る法律
- 軽易な業務への転換(労働基準法第65条3項):妊婦が請求した場合、事業主は軽い業務に転換させなければならない
- 時間外労働・休日労働・深夜業の制限:妊婦が請求した場合、残業や夜勤を免除しなければならない
- 妊娠を理由とした解雇の禁止(男女雇用機会均等法第9条):妊娠・出産・産休取得を理由とする不利益取り扱いは禁止
- 育休を理由とした不利益取り扱いの禁止(育児・介護休業法第10条)
つまり、妊娠を理由に解雇されたり、退職を迫られたりすることは法律で禁止されているということです。もしこうしたことが起きた場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談することができます。
産休・育休中にもらえるお金
休業中は給与が支払われないケースが多いですが、代わりにさまざまな給付金を受け取ることができます。
出産手当金
健康保険に加入している場合、産休中は「出産手当金」が支給されます。金額は標準報酬日額の3分の2で、産前42日・産後56日の範囲で受け取れます。
出産育児一時金
出産にかかる費用の補助として、子ども1人につき50万円が支給されます。直接支払制度を利用すれば、医療機関への支払いに充てることも可能です。
育児休業給付金
雇用保険に加入している方が育休を取得した場合、育児休業給付金が支給されます。
- 育休開始から180日間:休業開始前の賃金の67%
- 181日目以降:休業開始前の賃金の50%
社会保険料の免除
産休・育休期間中は、健康保険と厚生年金保険の保険料が免除されます。免除期間中も保険の給付は通常通り受けられ、将来の年金額にも影響しないので安心です。
休業中の収入と支出を家計簿で見える化しておくと、給付金が入るまでの期間も落ち着いてやりくりしやすくなります。

育児・介護休業法の改正ポイント
2025年4月に育児・介護休業法が改正され、より柔軟な働き方を支援する制度が整いました。介護職にも関わる主な改正ポイントを押さえておきましょう。
- 育休取得状況の公表義務拡大:従業員300人超の企業は、育休取得状況の公表が義務化された
- テレワークの努力義務化:3歳未満の子を養育する従業員にテレワーク環境を整える努力義務が新設
- 柔軟な働き方の措置義務:3歳から小学校就学前の子を育てる従業員に対し、短時間勤務やフレックスタイムなど5つの措置から2つ以上を講じることが義務化
- 個別の意向確認・配慮の義務化:妊娠・出産の申し出をした従業員への個別の意向聴取と配慮が義務化
介護施設でも、こうした法改正に対応する動きが広がっています。復帰後の働き方についても、以前より柔軟な選択肢が増えています。
職場復帰をスムーズにするためのポイント
育休後の職場復帰は、多くの方が不安を感じるタイミングです。ここでは、スムーズに復帰するためのポイントを紹介します。
復帰前に施設と面談する
復帰の1〜2か月前に、上司や人事担当者と面談の機会を設けましょう。復帰後の配属先、シフト、業務内容などを事前に確認しておくことで、不安を軽減できます。
短時間勤務制度を活用する
育児・介護休業法により、3歳未満の子を育てる従業員は短時間勤務制度(1日6時間勤務)を利用できます。いきなりフルタイムに戻るのが不安な方は、まずは短時間勤務から始めて徐々に勤務時間を延ばしていく方法がおすすめです。
夜勤免除を申し出る
小学校就学前の子どもがいる場合、深夜業(夜10時〜朝5時)の免除を請求することができます。子どもが小さいうちは夜勤なしの働き方も選択肢に入れてみましょう。
保育園の確保を早めに進める
復帰のネックになりやすいのが保育園の問題です。自治体の保育園申し込みスケジュールを確認し、入園希望の半年前くらいから準備を進めておくと安心です。
仕事と子育ての両立について先輩たちの工夫を知りたいときは、両立をテーマにした本を読んでおくと、復帰後の段取りをイメージしやすくなります。

産休・育休に関するQ&A
Q. パートや派遣でも育休は取れる?
はい、条件を満たせばパートや派遣社員でも育休を取得できます。子どもが1歳6か月になるまでに契約が満了することが明らかでないことが条件です。雇用形態に関わらず、まずは施設に確認してみましょう。
Q. 育休中に転職を考えてもいい?
法律上は育休中の転職活動を禁止する規定はありません。ただし、育児休業給付金は退職すると支給が停止されるため、タイミングは慎重に検討する必要があります。復帰後に改めて転職を考えるのも一つの方法です。
Q. 二人目の産休・育休は取れる?
もちろん取得できます。一人目の育休中に二人目を妊娠した場合、一人目の育休から連続して二人目の産休に入ることも可能です。施設の人事担当者に早めに相談しておくとよいでしょう。
Q. 復帰後に元のポジションに戻れる?
育児・介護休業法では、育休後は原則として「原職または原職相当職」に復帰させることが求められています。ただし、施設の状況によっては配置が変わることもあるため、復帰前の面談で確認しておくことが大切です。
まとめ:介護職でも安心して産休・育休を取得しよう
介護職であっても、産休・育休はしっかりと取得できる権利です。法的な保護も年々充実しており、給付金制度も整っているため、経済面での不安も軽減できます。
大切なのは、妊娠がわかった段階で早めに上司に報告し、業務調整や引き継ぎをスムーズに進めること。復帰後は短時間勤務や夜勤免除といった制度をうまく活用しながら、無理のないペースで仕事に戻っていきましょう。
もし「今の職場では産休・育休が取りにくそう」と感じるなら、産休・育休の取得実績が豊富な施設への転職も一つの選択肢です。介護業界は人手不足で求人も多いので、自分に合った働きやすい職場はきっと見つかります。

参考:介護労働安定センター


