アセスメントは、ケアプランを作成するうえで最も重要なプロセスだ。利用者の心身の状態や生活環境、本人・家族の希望を正確に把握し、適切なサービスにつなげるための土台となる。
しかし、「何をどう書けばいいのかわからない」「実地指導で指摘されないか不安」と感じているケアマネジャーや介護職員は少なくないだろう。この記事では、厚生労働省の課題分析標準項目23項目に沿ったアセスメントの書き方を、例文付きでわかりやすく解説する。

アセスメントとは?介護における役割と重要性
介護におけるアセスメントとは、利用者の身体機能・精神状態・生活環境・社会関係などを多角的に情報収集・分析し、課題(ニーズ)を明確にするプロセスのことだ。
アセスメントの結果をもとにケアプランが作成されるため、アセスメントの質がそのまま介護サービスの質に直結する。不十分なアセスメントは、利用者のニーズに合わないサービス提供につながりかねない。
アセスメントの流れ
- 情報収集:本人・家族への聞き取り、主治医意見書、介護認定調査票などから情報を集める
- 分析:収集した情報を整理し、利用者の課題を抽出する
- 課題の明確化:「何が問題か」「何を支援すれば生活の質が上がるか」を明確にする
- 記録:アセスメントシートに記載する
課題分析標準項目23項目とは
厚生労働省は、アセスメントで収集すべき情報を「課題分析標準項目23項目」として定めている。アセスメントシートの様式は複数あるが(MDS方式、包括的自立支援プログラムなど)、どの様式を使う場合でも、この23項目をカバーしている必要がある。
23項目の一覧
- 基本情報(受付、利用者等基本情報)
- 生活状況
- 利用者の被保険者情報
- 現在利用しているサービスの状況
- 障害老人の日常生活自立度
- 認知症である老人の日常生活自立度
- 主訴
- 認定情報
- 課題分析(アセスメント)理由
- 健康状態
- ADL(日常生活動作)
- IADL(手段的日常生活動作)
- 認知
- コミュニケーション能力
- 社会との関わり
- 排尿・排便
- じょく瘡・皮膚の問題
- 口腔衛生
- 食事摂取
- 問題行動
- 介護力
- 居住環境
- 特別な状況
各項目で何を聞き取り、どう書けばよいかは、記入例が豊富なアセスメントの解説本を手元に置いておくと、迷ったときにすぐ確認できる。

アセスメントシートの書き方のポイント
アセスメントシートを書くうえで、意識すべきポイントを解説する。
ポイント1:客観的な事実と主観を分けて書く
アセスメントでは、観察した事実(客観的情報)と利用者の訴え(主観的情報)を明確に区別して記載することが重要だ。
- 客観的情報の例:「歩行時にふらつきがあり、壁を伝って移動している」「食事は主食を半分程度残す日が多い」
- 主観的情報の例:「本人より『最近足が弱くなった気がする』との発言あり」「『食欲がない』と訴えている」
ポイント2:具体的に記載する
曖昧な表現は避け、具体的に記載しよう。
- 悪い例:「歩行は不安定」
- 良い例:「T字杖を使用しているが、方向転換時にバランスを崩すことがある。屋外歩行は見守りが必要」
- 悪い例:「食事は自立」
- 良い例:「箸を使って自力で食事できるが、汁物を持ち上げる際に手が震え、こぼすことがある。食事時間は約30分」
具体的な書き方の引き出しを増やしたい場合は、例文の多い介護記録の本で言い回しを確認しておくのもひとつの手だ。
ポイント3:本人の意向と家族の意向を分けて書く
実地指導で指摘されやすいのが、本人と家族の意向を同一欄にまとめてしまうケースだ。本人の意思を尊重するためにも、それぞれの欄に分けて記載することが求められる。
- 本人の意向:「できるだけ自分の足で歩きたい」「デイサービスに通って友達と話したい」
- 家族の意向:「一人でいる時間が心配なので、日中は見守りのあるサービスを利用してほしい」
ポイント4:強みも記載する
課題だけでなく、利用者の強み(できること・残存能力)も記載しよう。自立支援の視点からケアプランを立てるためには、「できないこと」だけでなく「できること」を把握することが不可欠だ。
- 「入浴は背中を洗う以外は自力で可能」
- 「近隣のスーパーまでは一人で歩いて買い物に行ける」
- 「料理は簡単なものなら自分で作っている」

項目別のアセスメント記入例
ここでは、主要な項目の具体的な記入例を紹介する。
健康状態の記入例
「高血圧症、変形性膝関節症、白内障で通院中。降圧薬と鎮痛薬を服用している。血圧は朝の測定で140/85mmHg前後で推移。膝の痛みは歩き始めに強く、温まると和らぐとのこと。白内障の影響で暗い場所では足元が見えにくい」
在宅の利用者では、家庭用の血圧計で測った朝の数値を記録してもらい、それを聞き取りの材料にすることもある。数値の評価は主治医や看護師の判断に沿って扱おう。
ADLの記入例
「食事:自力で摂取可能だが、手の震えがあり汁物をこぼすことがある。入浴:背中の洗体のみ介助が必要。浴槽のまたぎ動作は手すりを使って自力で可能。排泄:日中はトイレまで歩行し自立。夜間はポータブルトイレを使用。移動:T字杖使用。屋内は自立だが、屋外は見守りが必要」
IADLの記入例
「調理:火の消し忘れが気になるため、家族が電磁調理器に変更。簡単な調理は可能。買い物:近所のスーパーまでは一人で行けるが、重い荷物は運べない。金銭管理:自分でATMの操作は可能。ただし、最近おつりの計算を間違えることがあると家族から情報あり」
認知の記入例
「短期記憶の低下あり。昨日の出来事を聞いても『覚えていない』と答えることが多い。日付や曜日の見当識は保たれているが、季節の認識が曖昧になることがある。長谷川式は22点(前回24点)。道に迷うことはないが、約束の日時を忘れることがある」
介護力の記入例
「主介護者は長女(55歳・パート勤務)。同居しており、平日は9時から15時まで不在。近隣に長男家族が住んでおり、週末に様子を見に来ている。主介護者は介護に前向きだが、『自分の体力がいつまで持つか心配』と話している。介護負担の軽減が課題」
アセスメント面接のコツ
質の高いアセスメントを行うためには、面接(聞き取り)のスキルも重要だ。
信頼関係の構築が先
初対面でいきなり踏み込んだ質問をすると、利用者が心を閉ざしてしまうことがある。まずは日常的な会話から始め、安心感を持ってもらうことが大切だ。
オープンクエスチョンを使う
「はい/いいえ」で答えられる質問(クローズドクエスチョン)だけでなく、「普段のお食事はどんな感じですか?」「お困りのことはありますか?」など、利用者が自由に話せる質問を織り交ぜよう。
観察も重要な情報源
利用者の話だけでなく、訪問時の居住環境、利用者の表情・動作・身だしなみなども貴重なアセスメント情報だ。たとえば「部屋が散らかっている」「冷蔵庫に賞味期限切れの食品が多い」などは、IADL低下のサインかもしれない。
訪問中に気づいたことは忘れないうちにポケットのメモ帳へ書き留めておくと、あとでアセスメントシートにまとめるときに抜けを防ぎやすい。

実地指導で指摘されやすいポイント
実地指導では、アセスメントシートの不備が指摘されることが多い。以下のポイントを押さえておこう。
- 本人の意思確認がされていない:「本人に確認した」ことがわかる記述が必要(「本人より○○との希望あり」など)
- 記載漏れ:23項目のうち未記入の項目がある。該当なしの場合でも「該当なし」と記載する
- 更新が行われていない:状態変化があったのにアセスメントが更新されていない
- 本人と家族の意向が混在:「本人・家族ともに在宅希望」のように一括記載しない
- 具体性がない:「ADLは概ね自立」のような曖昧な表現は不可
アセスメントの更新タイミング
アセスメントは一度作成したら終わりではない。以下のタイミングで見直し・更新を行う。
- 介護認定の更新・区分変更時
- 利用者の状態に大きな変化があったとき(入退院、転倒、認知症の進行など)
- ケアプランの見直し時
- サービス担当者会議での情報に基づき更新が必要なとき
- 少なくとも半年に1回はモニタリングと合わせて見直す
まとめ
アセスメントは、利用者に最適な介護サービスを提供するための出発点だ。23項目を漏れなくカバーし、客観的事実と主観的情報を分けて具体的に記載することが、質の高いケアプラン作成につながる。
「書くのが大変」と感じることもあるかもしれないが、丁寧なアセスメントが利用者の生活を支える力になることを忘れず、一つひとつの項目に向き合っていこう。
📦 この記事で紹介した商品

参考リンク:


