介護業界の深刻な人手不足を受けて、外国人介護人材の受け入れが年々拡大しています。しかし、「制度が複雑でよくわからない」「実際にうまくいくのか不安」という声も多いのが現状です。
この記事では、介護分野で外国人を採用するための4つの在留資格制度をわかりやすく比較しながら、導入のメリットや注意点、採用までの流れまで丁寧に解説します。外国人介護人材の受け入れを検討している事業者の方や、外国人と一緒に働くことになった介護職員の方にぜひ参考にしていただきたい内容です。

介護分野で外国人を採用できる4つの制度
外国人が介護の仕事に就くためのルートは、大きく分けて4つあります。それぞれ対象者や在留期間、業務範囲が異なるため、違いを正しく理解しておくことが重要です。
1. EPA(経済連携協定)介護福祉士候補者
インドネシア・フィリピン・ベトナムの3カ国との経済連携協定に基づく制度です。候補者として来日し、介護施設で就労しながら介護福祉士の国家試験合格を目指します。在留期間は最長4年(ベトナムは5年)で、国家試験に合格すれば在留資格「介護」に移行して永続的に働くことが可能です。受け入れには国際厚生事業団(JICWELS)を通じたマッチングが必要で、採用までに1〜2年程度かかる点が特徴です。
2. 在留資格「介護」
日本の介護福祉士養成施設(専門学校など)を卒業し、介護福祉士の国家資格を取得した外国人が対象の在留資格です。在留期間の更新に上限がなく、長期的な雇用が見込めます。即戦力としての活躍が期待でき、訪問介護を含むすべての介護サービスに従事できるのが大きなメリットです。
3. 技能実習(介護職種)
開発途上国への技能移転を目的とした制度で、最長5年間の在留が可能です。監理団体を通じて受け入れを行い、入国後は実習計画に沿って業務に従事します。日本語能力試験N4以上が入国要件となっており、一定の日本語力が担保されています。なお、制度改正により「育成就労」への移行が予定されており、今後さらに柔軟な制度になる見込みです。
4. 特定技能1号(介護分野)
人手不足が深刻な分野で即戦力の外国人を受け入れるための制度です。介護分野の特定技能在留者数は約6万8千人に達しており、全分野中でも大きな割合を占めています。在留期間は通算5年で、介護技能評価試験と日本語試験に合格する必要があります。2〜4ヶ月程度で就労開始できるため、比較的スピーディーに人材を確保できるのが強みです。
4つの制度の中で、すぐに人材がほしい場合は「特定技能」、長期的な雇用を見据えるなら「在留資格 介護」がおすすめです。事業所の状況に合わせて最適なルートを選びましょう。
制度の違いを手元でじっくり比べたい方は、外国人介護人材の受け入れをテーマにした解説書を1冊用意しておくと、検討や社内説明のときに役立ちます。

外国人介護人材を採用するメリット
外国人材の受け入れに対して不安を感じる事業所は少なくありませんが、実際にはさまざまなメリットがあります。
慢性的な人手不足の解消
最大のメリットは、やはり人手不足の解消に直結する点です。日本人の応募だけでは必要な人員を確保できない地域や施設でも、外国人材という選択肢を加えることで採用の幅が広がります。
若い労働力の確保
外国人介護人材は20〜30代の若い世代が中心です。体力のある若い人材が加わることで、夜勤や身体介護の負担をチーム全体で分散しやすくなります。日本人職員の負担軽減にもつながるため、職場全体の働きやすさが向上します。
職場の活性化
異なる文化背景を持つ人材が加わることで、職場に新しい視点やコミュニケーションが生まれます。「利用者と外国人職員の交流が利用者の刺激になっている」という声も現場からは聞かれます。職場の雰囲気が明るくなるきっかけにもなります。
モチベーションの高さ
母国を離れて働きに来ている外国人材は、仕事に対する意欲が高い傾向があります。介護福祉士の国家資格取得を目指して熱心に勉強する姿勢は、日本人職員にもよい刺激を与えてくれます。
外国人介護人材を受け入れる際の注意点
メリットが多い一方で、受け入れにあたっては事前に知っておくべき注意点もあります。
日本語コミュニケーションの壁
介護の現場では利用者との細やかなコミュニケーションが求められるため、日本語力は非常に重要です。入職時のレベルだけでなく、入職後の日本語学習サポートも含めた計画が必要です。やさしい日本語で伝える工夫や、イラスト付きのマニュアルを用意するといった対策が有効です。
伝え方に迷うときは、介護現場向けの「やさしい日本語」の本で言い換えの例を見ておくと参考になります。
文化や習慣の違いへの配慮
宗教上の食事制限やお祈りの時間、祝日の考え方など、文化的な違いを理解し尊重する姿勢が大切です。事前に研修を行い、日本人職員全体で受け入れ体制を整えておくことでトラブルを防ぐことができます。
法的手続きの複雑さ
在留資格の申請・更新、労働条件の整備、報告義務など、外国人を雇用する際には通常の採用にはない法的手続きが発生します。監理団体や登録支援機関のサポートを受けることで、手続きの負担を軽減できます。
受け入れコスト
渡航費用、住居の手配、日本語研修、監理費・支援費など、受け入れには一定のコストがかかります。ただし、長期的な視点で見れば、安定した人材確保によるメリットの方が大きいケースがほとんどです。

外国人介護人材の採用から受け入れまでの流れ
ここでは、最も利用が多い「特定技能」を例に、採用の流れを解説します。
ステップ1:受け入れ準備
まず、登録支援機関の選定や受け入れ体制の整備を行います。外国人が生活する住居の手配、指導担当者の配置なども必要です。
ステップ2:人材募集・マッチング
人材紹介会社や海外の送り出し機関を通じて候補者を募集します。オンライン面接を経て採用者を決定するケースが増えています。
ステップ3:在留資格の申請
出入国在留管理庁に在留資格の認定証明書を申請します。審査には1〜3ヶ月程度かかるのが一般的です。
ステップ4:入国・就労開始
在留資格が認められたら、入国手続きを経て就労を開始します。入職後は生活支援と業務指導を並行して行い、スムーズな定着を目指します。
外国人介護人材と一緒に働くためのポイント
外国人材が長く定着して活躍するためには、受け入れ後のフォローが重要です。
やさしい日本語でのコミュニケーション
専門用語や方言は避け、短い文で明確に伝えるよう心がけましょう。指示を出すときは実演を交えると理解が深まります。
メンター制度の導入
日本人職員をメンターとして配置し、業務上の相談だけでなく生活面の悩みにも対応できる体制を整えると、外国人材の安心感が高まります。
定期的な面談の実施
仕事の状況や悩みを定期的にヒアリングする場を設けましょう。問題が小さいうちに対処することで、離職を防ぐことができます。
外国人材を「安い労働力」として扱うことは法律違反になるだけでなく、定着率の低下にも直結します。日本人職員と同等の待遇を守ることが大前提です。
外国人介護人材の採用に関するQ&A
Q. 外国人介護人材は訪問介護でも働ける?
A. 2025年4月から特定技能の訪問介護への従事が一部解禁されました。在留資格「介護」(介護福祉士資格保有者)であれば以前から訪問介護に従事可能です。制度によって対応が異なるため、詳しくは登録支援機関に確認するのがおすすめです。
Q. 日本語がほとんど話せない人でも働ける?
A. 特定技能では日本語試験(日本語能力試験N4以上相当)の合格が要件となっているため、最低限の日本語力は担保されています。ただし、介護現場では利用者とのコミュニケーションが重要なので、入職後も継続的な日本語学習支援が大切です。
学習支援の教材としては、介護の現場で使う言葉を集めた日本語テキストを用意している施設もあります。
Q. 外国人介護人材の受け入れにかかる費用は?
A. 制度やルートによって異なりますが、特定技能の場合、人材紹介料・渡航費・住居手配・登録支援機関への委託費用などを合わせると、受け入れ開始までに数十万円程度かかるのが一般的です。詳細は公式サイトで確認してください。

外国人介護人材の定着率を高めるための工夫
せっかく採用した外国人材が短期間で離職してしまうケースもあります。定着率を高めるためには、以下のような取り組みが有効です。
日本語学習の継続支援
入職後も日本語の学習機会を提供することが重要です。業務で使う専門用語や敬語表現、方言などを学べる環境を整えましょう。オンラインの日本語学習ツールやボランティア講師との連携を活用している施設もあります。
生活面のサポート体制
住居の確保、銀行口座の開設、役所の手続きなど、日常生活に関わるサポートも外国人材にとっては大きな助けになります。特に来日直後は不安が大きい時期なので、手厚いフォローが定着の鍵を握ります。
キャリアパスの提示
「この施設で長く働けばどんなキャリアが開けるか」を明確に示すことで、将来への安心感とモチベーションが高まります。介護福祉士の取得支援や、リーダー職への登用実績を伝えることも効果的です。
多文化共生の職場づくり
外国人材だけに日本の文化に合わせることを求めるのではなく、お互いの文化を理解し尊重する姿勢が大切です。多文化交流イベントの開催や、外国人材の母国の行事を施設で紹介するなど、双方向の交流が職場の一体感を高めます。
まとめ|外国人介護人材の活用で人手不足を乗り越えよう
介護分野における外国人人材の受け入れは、EPA・在留資格「介護」・技能実習・特定技能の4つのルートが整備されており、事業所の状況に合わせて選択できます。人手不足の解消だけでなく、職場の活性化や若い労働力の確保など多くのメリットがある一方、言語や文化の壁、法的手続きへの対応といった課題もあります。
受け入れを成功させるカギは、事前の体制整備と入職後の丁寧なフォローにあります。外国人材を大切なチームの一員として迎え入れることで、利用者にとっても職員にとってもより良い介護現場をつくっていきましょう。
参考リンク:
📦 この記事で紹介した商品


