「看取りケアを任されたけど、何をどうすればいいのかわからない」「利用者さんの最期にどう向き合えばいいのか不安」そんな気持ちを抱えている介護職の方は多いのではないでしょうか。
看取りケアは、利用者が人生の最期を穏やかに、その人らしく過ごせるよう支援する大切なケアです。「治療」ではなく「その人の生き方を尊重する」という視点が何より重要になります。
この記事では、看取りケアの基本的な考え方から、具体的なケアの内容、利用者やご家族への対応の仕方、介護職自身の心のケアまで、看取りに関わるすべての方に向けて丁寧に解説します。

看取りケアとは?基本的な考え方
まず、看取りケアの定義と基本的な考え方を確認しましょう。
看取りケアの定義
看取りケアとは、医師から回復の見込みがないと診断された利用者に対して、延命治療を行わず、身体的・精神的な苦痛を緩和しながら、その人らしい最期を迎えられるよう支援するケアのことです。
看取りケアと似た言葉に「ターミナルケア(終末期ケア)」がありますが、ターミナルケアが医療的な側面を含む広い概念であるのに対し、看取りケアは介護の立場からの日常的なケアに重点を置いた概念です。
看取りケアで大切にすべき3つの視点
| 視点 | 内容 |
|---|---|
| 本人の意思の尊重 | 利用者本人がどのような最期を望んでいるかを最優先にする |
| 苦痛の緩和 | 身体的な痛みや精神的な不安を可能な限り取り除く |
| 尊厳の保持 | 最期までその人らしい生活を支える |
看取りケアは「何もしないこと」ではありません。「不必要な医療介入をしない」という選択のもとで、その人の尊厳を守り、穏やかな時間を提供する積極的なケアです。
看取りケアへの移行プロセス
看取りケアは、突然始まるものではありません。段階的なプロセスを経て移行していきます。
ステップ1:医師による判断
利用者の状態について、医師が「回復の見込みがない」と判断します。この段階で、今後の方針について多職種チームでの話し合いが始まります。
ステップ2:本人・家族への説明と同意
利用者本人(意思表示が可能な場合)とご家族に対して、現在の状態と今後の見通しを丁寧に説明します。延命治療の有無、看取りケアの内容、施設でできること・できないことを具体的に伝え、同意を得ます。
ステップ3:看取り介護計画の作成
本人やご家族の意向を反映した看取り介護計画を作成します。医師、看護師、介護職、ケアマネジャーなど多職種が連携して、ケアの方針を共有します。
ステップ4:看取りケアの実施
計画に基づいて、日々のケアを提供していきます。利用者の状態は日々変化するため、状況に応じてケアの内容を柔軟に調整します。
ステップ5:看取り後のケア
利用者が亡くなった後、エンゼルケア(死後の処置)やご家族へのグリーフケア(悲嘆のケア)を行います。
看取りケアにおける具体的な対応
看取りケアの現場で、介護職が行う具体的なケアの内容を確認しましょう。
身体的なケア
清潔の保持
入浴が難しい場合は、清拭(身体を拭くこと)や部分浴で清潔を保ちます。口腔ケアも重要で、口の中を清潔に保つことは感染予防だけでなく、利用者の快適さにもつながります。
体位変換と褥瘡予防
寝たきりの状態が続くと褥瘡(床ずれ)のリスクが高まります。定期的な体位変換とエアマットなどの福祉用具の活用で、苦痛を最小限に抑えましょう。ただし、頻繁な体位変換自体が利用者の負担になることもあるため、状態を見ながら判断します。
食事と水分補給
食欲が低下している場合は、無理に食べさせることは避けましょう。本人が食べたいものを、食べられる量だけ提供します。口から摂取できなくなった場合は、口唇や口腔内を潤すケアを行います。
痛みや苦痛の緩和
呼吸困難がある場合は、楽な姿勢を整えたり、室温や湿度を調整したりします。末端が冷える場合は温めてあげることも大切です。痛みがある場合は、速やかに看護師や医師に報告して対応してもらいましょう。
精神的なケア
安心感を与えるコミュニケーション
終末期の利用者は、死への恐怖や不安、寂しさなど、さまざまな感情を抱えています。側にいて手を握る、穏やかな声で話しかける、好きな音楽を流すなど、安心感を与える関わりを大切にしましょう。
傾聴と受容
利用者が不安や恐れを口にした場合は、否定せず、ありのまま受け止めて傾聴しましょう。「大丈夫ですよ」と安易に励ますよりも、「つらいですよね」と気持ちに寄り添う姿勢が求められます。
意識がない場合の対応
意識がなくなっても、聴覚は最後まで残ると言われています。名前を呼んだり、声をかけたりすることは、最期まで続けてください。
環境面のケア
- 利用者が落ち着ける環境を整える(照明、温度、音など)
- 家族がいつでも面会できるよう配慮する
- 本人の思い出の品や好きな花を部屋に置く
- 宗教的な配慮が必要な場合は、本人やご家族の意向を確認する

ご家族への対応と寄り添い方
看取りケアでは、利用者本人だけでなく、ご家族への対応も非常に重要です。
ご家族が抱える感情を理解する
ご家族は、大切な人の最期が近づくにつれて、さまざまな感情を経験します。
- 不安・恐怖:「本当にこれでいいのだろうか」という迷い
- 悲しみ:大切な人を失うことへの深い悲しみ
- 罪悪感:「もっと早く何かできたのでは」という後悔
- 怒り:やり場のない感情が怒りとして表れることも
- 感謝:スタッフのケアに対する感謝の気持ち
これらの感情は自然なものであり、ご家族の感情の揺れに寄り添うことが大切です。
ご家族への具体的な対応ポイント
状態の変化を丁寧に伝える
利用者の状態に変化があった場合は、速やかにご家族へ連絡しましょう。「食事の量が減ってきた」「反応が少なくなってきた」など、専門用語を避けてわかりやすい言葉で伝えることが大切です。
ご家族ができることを提案する
「何もしてあげられない」と無力感を感じているご家族に対して、「手を握ってあげてください」「好きだった音楽をかけてあげませんか」など、ご家族ができる具体的なケアを提案しましょう。
休息のスペースを用意する
付き添いで疲労しているご家族のために、休めるスペースや飲み物を提供するなどの配慮も大切です。ご家族が休んでいる間も「ちゃんと見守っていますので安心してください」と伝えることで、安心して休めるようになります。
看取り後のグリーフケア
利用者が亡くなった後、ご家族の悲嘆に寄り添うケア(グリーフケア)も重要です。お悔やみの言葉を伝えるとともに、「最期まで本当によく寄り添っておられましたね」など、ご家族の頑張りを認める言葉をかけましょう。
介護職自身の心のケア
看取りケアは、介護職にとっても精神的に大きな負担がかかる業務です。自分自身の心のケアも忘れないでください。
悲しみを我慢しない
長期間にわたって関わってきた利用者の最期に立ち会えば、悲しみを感じるのは当然のことです。「プロだから泣いてはいけない」と思い込む必要はありません。信頼できる同僚と気持ちを共有し、感情を抱え込まないようにしましょう。
デスカンファレンスに参加する
看取りの後に行われるデスカンファレンス(振り返りのカンファレンス)は、ケアの内容を振り返るとともに、スタッフが気持ちを整理する大切な場です。積極的に参加して、思いを共有しましょう。
自分の限界を知る
看取りケアが続くと、精神的に追い詰められることがあります。そのような場合は、上司に相談して一時的に担当を交代してもらうことも大切な判断です。
看取りケアに必要な心構え
最後に、看取りケアに臨む際の心構えをまとめます。
「正解」はないことを受け入れる
看取りケアに「こうすれば正解」というマニュアルはありません。利用者一人ひとりの状況や意向が異なるため、その都度、チームで話し合いながらベストと思われるケアを模索していくことが求められます。
多職種との連携を大切にする
看取りケアは、介護職だけで行うものではありません。医師、看護師、ケアマネジャー、栄養士、相談員など、多職種が連携してチームとして対応します。気になることや判断に迷うことがあれば、積極的に他職種に相談しましょう。
日頃からのコミュニケーションが基盤
看取りの場面で良いケアを提供するためには、日頃から利用者との信頼関係を築いておくことが不可欠です。利用者の人生観、価値観、大切にしていることなどを普段のコミュニケーションの中で把握しておくことが、看取りケアの質を高めることにつながります。
自分自身の「死生観」と向き合う
看取りケアに携わるなら、自分自身の死生観(死や命に対する考え方)と向き合うことも大切です。研修やカンファレンスなどの機会を通じて、「自分は死についてどう考えているか」を内省することで、より深いケアができるようになります。
よくある質問
Q. 看取りケアの経験がまったくない場合、何から始めればいいですか?
まずは施設内の看取り介護に関する研修やマニュアルを確認しましょう。先輩スタッフの対応を見て学ぶことも大切です。不安を感じるのは当然のことなので、遠慮なく上司や先輩に相談してください。
Q. 利用者が「死にたくない」と言った場合、どう対応すればいいですか?
否定も肯定もせず、まずはその気持ちを受け止めましょう。「そうですよね、不安ですよね」と共感の言葉を伝え、側にいることを伝えてください。安易な励ましや、「大丈夫ですよ」といった言葉は避けた方が良いでしょう。
Q. 夜間に容態が急変した場合の対応は?
施設の看取り介護計画に基づいて対応します。多くの場合、事前に「急変時の連絡先」「救急搬送の有無」などが決められているため、それに従って行動します。判断に迷う場合は、看護師や当直医に連絡しましょう。
まとめ
看取りケアは、利用者が人生の最期を穏やかに、尊厳を持って過ごせるように支援する、介護の中でも特に重要なケアです。身体的な苦痛の緩和、精神的な安心感の提供、ご家族への寄り添いなど、多岐にわたる対応が求められます。
不安を感じるのは自然なことです。しかし、「利用者の気持ちに寄り添いたい」という思いがあれば、それだけで十分な出発点になります。チームで連携しながら、利用者とご家族にとって最善のケアを提供していきましょう。
そして、介護職自身の心のケアも忘れないでください。看取りに向き合う中で感じた悲しみや疲れは、きちんと受け止めて、仲間と共有しながら前に進んでいきましょう。
参考:看取り介護で大切なことは?ご家族の心理に寄り添ったケアの進め方(ささえるラボ)
参考:介護施設での看取り介護の知識と不安の解消法(きらケア)
参考:看取りとは?介護施設での看取り介護への移行と対応を解説(見守りライフ)



