介護の現場で毎日行われる申し送り。「何をどう伝えればいいのかわからない」「うまくまとめられなくて時間がかかる」と悩んでいる方は多いのではないでしょうか。申し送りは、利用者さんの安全を守り、チーム全体のケアの質を底上げするための大切なコミュニケーション手段です。
この記事では、介護の申し送りの書き方のコツから、すぐに使える例文まで、現場目線でわかりやすく解説していきます。申し送りが苦手な方も、この記事を読めばスムーズに伝えられるようになるはずです。

介護の申し送りとは?なぜ重要なのか
介護の申し送りとは、勤務交代のタイミングで、利用者さんの状態や業務上の連絡事項を次の担当者へ引き継ぐことです。口頭で伝えるケースもあれば、申し送りノートや介護記録ソフトを使って文章で残すケースもあります。
申し送りが重要な理由は大きく3つあります。
- 利用者さんの安全確保:体調の変化やリスク情報を共有することで、事故やトラブルを未然に防げる
- ケアの継続性:前の勤務帯で行った対応を引き継ぐことで、一貫したサービスが提供できる
- チームワークの向上:情報の「見える化」によって、スタッフ間の連携がスムーズになる
たとえば、日勤帯で利用者さんが転倒しかけた情報が夜勤スタッフに伝わっていなければ、夜間の見守り体制を強化できません。申し送りは利用者さんの命を守る最前線の作業といっても過言ではないのです。
申し送りで伝えるべき内容
申し送りで伝えるべき内容は「次の担当者が知らないと困る情報」です。すべてを詳しく伝えようとすると時間がかかりすぎるため、優先順位をつけて伝えることが大切です。
体調・バイタルの変化
利用者さんの体温、血圧、脈拍、酸素飽和度などのバイタルサインに変化があった場合は優先的に伝えましょう。「いつもと違う」という変化こそが最も重要な情報です。
SpO2(酸素飽和度)の数値の読み方に慣れておきたい方は、家庭用のパルスオキシメーターで測り方を練習しておくのもひとつの方法です。
食事・排泄・入浴の状況
食事量の低下、排泄パターンの変化、入浴時に気づいた皮膚トラブルなど、日常のケアで気づいた変化を共有します。普段と変わりなければ「特変なし」で構いません。
服薬・処置の経過
薬の変更があった場合や、処置後の経過観察が必要な場合は確実に引き継ぎます。医師や看護師からの指示内容もあわせて伝えましょう。
利用者さんの精神状態・行動の変化
不穏な様子が見られた、帰宅願望が強くなっている、レクリエーションで笑顔が増えたなど、心理面や行動面の変化も申し送りの対象です。
業務連絡・家族からの連絡
面会予定、外出予定、ケアプラン変更、家族からの要望など、業務上の連絡事項も忘れずに伝えます。

申し送りの書き方のコツ5つ
申し送りを上手に書くためのコツを5つ紹介します。これを意識するだけで、わかりやすさが格段に変わります。
コツ1:5W1Hを意識する
「いつ(When)・どこで(Where)・誰が(Who)・何を(What)・なぜ(Why)・どのように(How)」を意識して書くと、情報の抜け漏れを防げます。
たとえば「Aさんが転びそうになった」ではなく「14時頃、食堂で、Aさんが椅子から立ち上がろうとした際にふらつき、近くにいたスタッフが支えた」と書けば、状況が一目でわかります。
「いつ」を正確に書くには、介助中でもさっと時刻を確認できるナースウォッチがあると便利です。
コツ2:事実と主観を分ける
申し送りで最も大切なのは客観的な事実を正確に伝えることです。自分の推測や意見を書く場合は「~と思われる」「~の可能性がある」と明確に区別しましょう。
たとえば「体調が悪そうだった」ではなく「顔色が青白く、食事を半分残していた。本人に聞くと『少し気持ちが悪い』とのこと」と書けば、次の担当者が自分で判断できます。
コツ3:結論から先に書く
忙しい現場では、長い文章を読む余裕がありません。まず結論(何が起きたか・何をしてほしいか)を先に書き、その後に経緯や詳細を補足するのが効果的です。
コツ4:テンプレートを活用する
申し送りの「型」を決めておくと、毎回ゼロから考える必要がなくなります。「利用者名→変化の内容→対応→次の勤務帯への依頼事項」という流れをテンプレート化しておくと便利です。
コツ5:略語・専門用語を使いすぎない
施設内で統一されている略語は問題ありませんが、新人スタッフやパート職員が読んでもわかる表現を心がけましょう。「BP」「SpO2」などは施設のルールに従って使い分けてください。
【場面別】介護の申し送り例文集
ここからは、場面別にすぐに使える申し送りの例文を紹介します。自分の施設の書式にあわせてアレンジしてみてください。もっと多くの文例に触れたい方は、介護記録の書き方をまとめた本を1冊手元に置いておくのも手です。
体調変化に関する申し送り例文
【例文1】
「Aさん、15時のバイタル測定で体温37.8度。普段は36度台前半のため、看護師に報告済み。クーリング対応を実施し、17時に再検温予定。夜勤帯でも体温の経過観察をお願いします。」
【例文2】
「Bさん、昼食後に『胸がムカムカする』との訴えあり。嘔吐はなし。食事量は全量摂取。看護師に報告し、経過観察の指示を受けています。夕食時の食事量と訴えの有無を確認してください。」
食事に関する申し送り例文
【例文3】
「Cさん、昼食の主食を3割残し。ここ2日間、食事量が減少傾向。本人に聞くと『味がわからない』とのこと。看護師に報告済み、翌日のケアカンファで食事形態の見直しを検討予定です。」
転倒リスクに関する申し送り例文
【例文4】
「Dさん、16時頃にトイレへ向かう途中、廊下でふらつきあり。壁に手をついて転倒には至らず。本人は『足がしびれた』と話す。ヒヤリハット報告書を作成済み。夜間のトイレ誘導時は見守りを強化してください。」

精神状態・認知症ケアに関する申し送り例文
【例文5】
「Eさん、14時頃から帰宅願望が強くなり、玄関付近を何度も行き来。声かけで居室に戻るも、30分ほどで再び玄関へ。お茶をお出しして傾聴したところ落ち着かれ、15時半からレクに参加。夕方以降も不穏が出る可能性があるため、居場所の確認をお願いします。」
申し送りをスムーズに行うための工夫
書き方のコツとあわせて、日々の業務の中で申し送りをスムーズにするための工夫も紹介します。
メモを活用してリアルタイムに記録する
勤務中に気づいたことは、その場でメモに残しておきましょう。申し送りの時間になってから思い出そうとすると、抜け漏れが生じやすくなります。ポケットに入るサイズのメモ帳や、利用者ごとの付箋を活用する方法が人気です。
ICTツールを活用する
記事執筆時点では、多くの介護施設で介護記録ソフトやアプリが導入されています。タブレットやスマートフォンからリアルタイムに記録を入力し、チーム全体で情報を共有できるため、口頭の申し送り時間を大幅に短縮できます。「CareViewer」「ほのぼの」「カイポケ」などが代表的なサービスとして知られています。
朝礼・夕礼の申し送りフォーマットを統一する
施設全体で申し送りのフォーマットを統一しておくと、伝える側も聞く側もスムーズです。「特変のあった利用者のみ報告」「バイタルの異常値のみ共有」などルールを決めておくと、ダラダラと長引くのを防げます。

申し送りでやりがちな失敗と対策
申し送りでよくある失敗パターンとその対策を確認しておきましょう。
情報が多すぎて伝わらない
すべてを伝えようとするあまり、話が長くなって要点がぼやけるケースです。「次の勤務帯で対応が必要なこと」に絞って伝えると、相手に確実に伝わります。
主観的な表現が多い
「元気がなかった」「機嫌が悪そうだった」という主観的な表現では、読んだ人が状況を正しく判断できません。「表情が硬く、声かけに対してうなずくのみだった」のように、具体的な行動や言動で描写しましょう。
対応内容と依頼事項が不明確
変化があったことだけ伝えて、「で、どうすればいいの?」と次の担当者を困らせるパターンです。何を対応したか、次に何をしてほしいかまで明記しましょう。
申し送りの記録は公的な文書としての性質もあります。「個人の感想」と「客観的事実」を混同しないように気をつけましょう。万が一、事故やトラブルが起きた場合に、記録が証拠として扱われることもあります。
申し送りが苦手な方へ|上達するための練習法
申し送りのスキルは、練習すれば着実に向上します。以下の方法を試してみてください。
先輩の申し送りを真似する
「この人の申し送りはわかりやすいな」と感じる先輩がいたら、その人の書き方や話し方をよく観察してみましょう。構成や言い回しを真似することが上達への近道です。
書いた後に読み返す習慣をつける
申し送りを書いた後に、「自分がこの情報を受け取る側だったら、これで必要な対応ができるか?」と一度読み返してみましょう。足りない情報に気づけるようになります。読み返して書き足すときは、赤や青に切り替えられる多機能ボールペンがあると追記部分がひと目でわかります。
フィードバックをもらう
最初のうちは、先輩や上司に「わかりにくいところはなかったですか?」と聞いてみるのも効果的です。自分では気づけない癖を指摘してもらえることがあります。
Q&Aコーナー|介護の申し送りでよくある質問
Q. 申し送りの時間はどのくらいが理想ですか?
A. 利用者数や施設の規模にもよりますが、1回あたり10~15分程度が目安です。長くなりすぎると集中力が切れてしまうため、要点をまとめてテンポよく進めることが大切です。
Q. 口頭の申し送りと書面の申し送り、どちらが大切ですか?
A. どちらも大切ですが、記録として残すなら書面やシステム上の記録が重要です。口頭で伝えた場合でも、申し送りノートや介護記録ソフトに要点を残しておくと、確認漏れを防げます。
Q. 新人でもわかりやすい申し送りを書けるようになりますか?
A. 最初は時間がかかっても、テンプレートを使い、先輩の書き方を参考にしていけば、着実にスキルが身についていきます。3か月もすればスムーズに書けるようになったという声が多いです。
Q. 申し送りの情報量が多すぎて困ります。どう絞ればいいですか?
A.「次の勤務帯で対応が必要かどうか」を基準に取捨選択しましょう。「いつも通り」の情報は省略し、変化があった部分だけに集中すると自然と情報量が絞れます。

まとめ|申し送りのコツをつかんでケアの質を上げよう
介護の申し送りは、利用者さんの安全とケアの質を支える重要な業務です。書き方のコツを振り返ると、5W1Hを意識する・事実と主観を分ける・結論から書く・テンプレートを活用する・略語を使いすぎないの5つがポイントでした。
最初は難しく感じるかもしれませんが、今回紹介した例文やテンプレートをベースに、実際の業務の中で繰り返し書いていくことで、着実にスキルは向上します。「わかりやすい申し送り」が書けるようになれば、チームからの信頼も高まり、仕事のやりがいにもつながるはずです。
申し送りのスキルは、介護職としてのキャリアを通じて役立つ基本スキルです。ぜひ今日から意識して取り組んでみてください。
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